網膜が
裂孔原性網膜剥離は網膜に
裂孔原性網膜剥離の原因は、網膜に孔があくことですが、裂孔は何の理由もなしにできるわけではなく、しかるべき前状態ないし原因があります。たいていの場合、網膜裂孔が起こりやすい場所を元々もっている人に網膜裂孔は起こり、そして網膜剥離に至ります。前状態のなかで最も多いのは
網膜裂孔には2つの代表的なでき方があります。最も多いのは後部硝子体剥離(こうぶしょうしたいはくり)(コラム)に伴ってできる
そのほかにも、若年者ではアトピー性皮膚炎、家族性
若年者に多い格子状変性内の円孔によるものは、丈の低い網膜剥離がゆっくりと進行します。このタイプでは網膜剥離が周辺部にとどまっている間は症状がなく、剥離が中心近くに達して視野の欠損に気づいたり、中心に達して視力の低下に気づいたりします。前駆症状はほとんどありません。
中高年に多い後部硝子体剥離による裂孔では、丈の高い網膜剥離が急速に進行することが多く、しばしば短時間で視野欠損、視力低下が現れます。飛蚊症(ひぶんしょう)(コラム)、光が走るように見える
網膜剥離自体は、眼底検査で容易に診断できます。網膜剥離の検査では、原因となった網膜裂孔をさがし出すことがとくに重要です。網膜裂孔は眼底の周辺部に起こりやすいので、周辺部は慎重に検査する必要があります。
硝子体出血や白内障などで眼底が見えないこともありますが、その場合は超音波検査、網膜電図(眼底に光をあてて、網膜の反応を電位変化として記録する)検査で網膜剥離の有無を判断します。
ほとんどの場合は手術が必要です。方法は、
最近では、徐々に硝子体手術の割合が増えてきています。網膜剥離がこじれた状態である増殖硝子体網膜症、黄斑円孔による網膜剥離、巨大裂孔による網膜剥離などでは硝子体手術が主に行われます。軽い網膜剥離では網膜光凝固術(もうまくひかりぎょうこじゅつ)(コラム)で治療することもあります。
網膜剥離の治療は急を要することが多いので、すみやかに眼科医に診てもらう必要があります。
河野 眞一郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
眼底の網膜がはがれて失明する疾患。網膜は目をカメラに例えるとフィルムに相当する働きをしている0.5ミリという薄い透明な膜である。この網膜は胎内で目が発生するときの眼杯の内壁を構成した神経上皮層と、外壁を構成した色素上皮層とが接着してできたものである。ところが、若年または成人に達してから、先天的あるいは遺伝的素因、強度の近視や外傷、加齢による変化など種々な原因で神経上皮層の一部に小さな裂孔(れっこう)ができ、この孔から液化した硝子体(しょうしたい)が二つの層の間隙(かんげき)に進入すると、神経上皮層がはがれてしまう。このような状態を裂孔原性網膜剥離という。網膜剥離には、裂孔がなくても、網膜やその外側の脈絡膜に腫瘍(しゅよう)や炎症がおこったり、また網膜や硝子体に増殖組織ができて網膜を牽引(けんいん)するためにおこることがある。しかし、主要なものは裂孔原性の網膜剥離である。
網膜剥離がおこると視野が狭くなり、視力が低下し、放置すれば失明状態になるので、できるだけ早く治療する必要がある。裂孔原性網膜剥離の治療は、手術によって剥離した網膜を元に復位させ、裂孔をジアテルミー凝固、冷凍凝固、レーザーなどによる光凝固によって閉鎖することである。最近、手術法の進歩により治療成績は年々向上している。
[箕田健生]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…赤道部変性と呼ばれる変化がその代表である。硝子体の収縮などの変化で容易に網膜に裂孔が生じて網膜剝離(はくり)に進行することがある。
[眼底出血]
眼底検査は血管を見る検査といっても過言ではない。…
…これらの視野欠損は,病変の種類やその程度により,大小さまざまであり,また部位や形状も異なる。たとえば網膜剝離(はくり)では,剝離した網膜に対応した部位に欠損が生ずる。また緑内障の初期では,ブエルム領域(10度と20度の円周で囲まれた部分)に弓状,半月状の欠損が出現する。…
…レーザー凝固装置では,細隙灯顕微鏡にセットして,眼底を検査しながら操作ができるため,急速に普及したものと思われる。凝固した組織がやがて瘢痕(はんこん)・萎縮組織に変わるという生体の反応を治療に結びつけたもので,糖尿病性網膜症や網膜静脈閉塞症で代表される網膜・硝子体出血を起こす網膜血管病変,網膜剝離(はくり)(裂孔・赤道部変性の予防的処置を含む),中心性網膜炎などの場合に行われる。また一部の未熟児網膜症にも適応されるが,いずれも実施にあたっては,真の意味での有効性を見極めた慎重な配慮が必要である。…
…
[網膜血管腫]
網膜の動静脈に異常があり,血管の拡張,増殖,血管瘤形成あるいは動静脈吻合(ふんごう)などを起こす先天性病変。滲出性変化(網膜浮腫,網膜剝離(はくり))により失明に至る危険が高い。幼年期から壮年期にわたり,どの年代にも発症するが,その萌芽は出生直後から存在していると考えられる。…
※「網膜剥離」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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