橋本病(読み)ハシモトビョウ(その他表記)Hashimoto’s disease

デジタル大辞泉 「橋本病」の意味・読み・例文・類語

はしもと‐びょう〔‐ビヤウ〕【橋本病】

自己免疫原因甲状腺れる病気。30~50歳代の女性に多く、慢性に進行し、甲状腺の機能は正常であることが多い。大正元年(1912)外科医の橋本はかる[1881~1934]が報告慢性甲状腺炎

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知恵蔵 「橋本病」の解説

橋本病

自己抗体(抗サイログロブリン抗体、抗マイクロゾーム抗体)が自己の体内の甲状腺を破壊し、それにより甲状腺ホルモン分泌低下して様々な症状を引き起こす自己免疫疾患の一つ。1912年(大正元年)に九州大学の橋本策(はかる)氏が発見したため、この名前がつけられた。慢性甲状腺炎ともいう。甲状腺機能低下症の代表的な疾患である。ただし、橋本病のすべてが甲状腺の機能低下を伴うわけではなく、機能異常がみられるのは全体の約4割といわれている。女性に多い。これとは逆に、甲状腺の機能が活発になる甲状腺機能亢進症の代表的なものに、バセドウ病がある。
橋本病の症状で特徴的なのは、甲状腺の腫れである。また、甲状腺機能が低下すると、甲状腺ホルモンが不足するため新陳代謝が低下し、寒い、疲れやすいなどの全身症状が現れる。その他、脈拍が少なくなる、息切れがするなどの循環器症状、食欲低下、便秘などの消化器症状、皮膚の乾燥や脱力感、筋力低下などの症状も現れる。コレステロールの上昇や肝障害、貧血を起こすこともある。もの忘れや無気力などの神経・精神症状を来すこともあり、認知症の原因の一つになるともいわれている。甲状腺の機能低下が伴わない場合は、自覚症状もなく薬物治療の必要はないが、機能低下による前記のような症状が現れた場合は、甲状腺ホルモン剤による治療が必要になる。日本甲状腺学会の診断ガイドラインでは、「バセドウ病等の他の原因がみられない『びまん性(広範な)甲状腺腫大』」といった臨床所見と、「(1)抗甲状腺マイクロゾーム抗体陽性(2)抗サイログロブリン抗体陽性(3)細胞診でリンパ球浸潤を認める」といった検査所見のうち1つ以上を有するものを「慢性甲状腺炎」と診断するなどとしている。

(小林千佳子 フリーライター / 2009年)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「橋本病」の意味・わかりやすい解説

橋本病
はしもとびょう

1912年ドイツの医学雑誌に外科医の橋本策(はかる)(1881―1934)がリンパ腫(しゅ)性甲状腺腫(せんしゅ)の名のもとに発表した疾患。慢性甲状腺炎と同義の疾患である。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「橋本病」の意味・わかりやすい解説

橋本病
はしもとびょう

橋本策 (さかる) が 1912年に報告した慢性甲状腺炎。甲状腺が結節性に腫大し,甲状腺機能の低下が生じることが多い。甲状腺機能低下症に陥ると,血液中の甲状腺ホルモンが不足するため,新陳代謝が低下し,心身両面での活動性が低下する。無気力になり,記憶力が減退し,常に眠けを覚えるようになり,話し方も緩慢になる。皮膚は蒼白で浮腫状になるが,圧痕は残らない。代表的な自己免疫疾患で,中年婦人によく発生する。乾燥甲状腺末の内服で機能低下を予防または治療できる。また,甲状腺腫が縮小する例がある。

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栄養・生化学辞典 「橋本病」の解説

橋本病

 橋本甲状腺腫,橋本甲状腺炎ともいう.自己免疫疾患で,甲状腺に腫瘍ができる.中年女性に多い.

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世界大百科事典(旧版)内の橋本病の言及

【甲状腺】より

…治療にはアスピリンやステロイドが用いられる。慢性甲状腺炎は,1912年橋本策(はかる)によって初めて報告され橋本病とも呼ばれているが,代表的な臓器特異性自己免疫疾患として知られている。中年以降の女性が圧倒的に多いが,10歳ころから患者の発生がみられる。…

※「橋本病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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