日本大百科全書(ニッポニカ) 「イレーネ」の意味・わかりやすい解説
イレーネ
いれーね
Irene
(752―803)
ビザンティン帝国の女帝(在位797~802)。アテネの卑賤(ひせん)の出ながら皇帝レオ4世Leo Ⅳ(749―780、在位775~780)の皇妃となり、夫の死後息子コンスタンティノス6世(10歳)の摂政となった(780)。生来の聖画崇拝の支持者で、第7回公会議(787)を開催、聖画崇拝を再興、第一次イコノクラスム(聖画像禁止令)に終止符を打った(東方正教会の聖人に列せられた)。のちに成長した息子と不仲となり、これを粛清し、ビザンティン帝国初の女帝となる。その治世下、イスラム、ブルガリアへの貢納金、教会・修道院への寄付、首都住民税の廃止などにより国庫は疲弊した。西のカール大帝との婚姻が計画されるうち、事態を重くみた貴族による宮廷革命によりその地位を追われ、レスボス島に流されて没した。
[和田 廣 2022年6月22日]