イブンバットゥータ(英語表記)Ibn Baṭṭūṭah

デジタル大辞泉 「イブンバットゥータ」の意味・読み・例文・類語

イブン‐バットゥータ(Ibn Baṭṭūṭah)

[1304~1377]アラブ旅行家モロッコから西アジアインド東南アジアを経て中国に至る旅行をし、見聞記録旅行記「ソフラ(三大陸周遊記)」は貴重な史料

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改訂新版 世界大百科事典 「イブンバットゥータ」の意味・わかりやすい解説

イブン・バットゥータ
Ibn Baṭṭūṭa
生没年:1304-68・69

ベルベル系のアラブ人旅行家。イブン・バトゥータIbn Baṭūṭaともいう。1377年没ともいわれる。モロッコのタンジールに生まれ,1325年,22歳の時メッカ巡礼を志して故郷を出発,陸路エジプトを経てシリアからメッカに巡礼した後,イラク,アラビア半島,小アジアを旅して33年から8年余りデリーに滞在した。次いでスマトラを経て元朝治下の泉州,大都(北京)に至り,再びインド,シリア,エジプトを経由して49年フェスに帰還した。その後グラナダを訪問したのに続いて,52-53年にはサハラ砂漠を横断してニジェール川上流域を踏査した。マリーン朝君主の求めに応じてイブン・ジュザイによる口述筆記が行われ,前後30年に及ぶ旅行記は《都市の不思議と旅の驚異を見る者への贈物Tuḥuhfa al-nuẓẓār》(通称Riḥla)として57年に完成した。イブン・ジュバイルからの借用や若干の記憶違いもあるが,14世紀前半のイスラム世界についておおむね正確で,しかも具体的な情報を伝えている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のイブンバットゥータの言及

【アフリカ探検】より

…その代表的都市はニジェール河畔のトンブクトゥである。14世紀のアラブの地理学者イブン・バットゥータは北アフリカの沿岸全域,ナイル川をアスワンまで,東海岸をキルワまで,サハラ以南ではニジェール川中流部を踏査し記録した。それは黒人世界の実情を初めて総合的に紹介するものであり,そこに描かれたトンブクトゥはとくに後世の探検家を引きつけるものとなった。…

【タガザ】より

…おそらく8世紀のガーナ王国の時代からマリ帝国,ソンガイ帝国の時代まで,600年余りにわたって,これら西サハラ南縁に栄えた黒人帝国に岩塩を供給し,塩と黒人の国の金との交易によってそれらの帝国に繁栄をもたらした。1352年にこの塩の町を訪れたアラブの旅行家イブン・バットゥータは10日ほど滞在して見聞記を残している。当時タガザには2km四方くらいの岩塩の層があり,1000~2000人の住民がいたらしい。…

【手】より

…日本では〈手〉に代価の意をもたせて〈塩手米〉のように商品交換を表す語とした例が鎌倉時代以後にあるが,さらにさかのぼれば《万葉集》では〈テ〉に〈価〉や〈直〉をあてており,〈手〉と交換,交易との関連はかなり古くから意識されていたと推定される。 14世紀のアラブ人冒険旅行家イブン・バットゥータは,スーダンの黒人が女性の手と乳房は人体の中で最も美味だと語った話を伝えている(《都市の不思議と旅の驚異を見る者への贈物》)。中国の四川料理に〈紅焼熊掌〉(熊の手のしょうゆ煮)が,雲南省の料理に〈大燉熊掌〉(熊の手の火腿(ハム)入り蒸しスープ)があり,とくに冬眠に入る前のヒグマの手は脂がのって柔らかなので珍重される。…

【ニジェール[川]】より

…【端 信行】
[探検史]
 この大河の存在は古代から流域外住民にも知られていたが,水源,経路,出口についての知識は流域住民でさえも知らなかった。14世紀のアラブの大旅行家イブン・バットゥータはニジェール川についての最初の実見記を残した。しかし彼はこの川をナイル川と同一視し,またその視察は大交易都市トンブクトゥを中心とする中流地帯に限られていた。…

【旅行記】より

…旅行記はまずイスラム商人にとって欠かせない知識の源泉であるとともに,後代の人々にとってはイスラム世界の巡礼,留学,旅行の際のガイドブックとして実際に役にたった。 代表的なものにモロッコ生れのイブン・バットゥータの旅行記やアンダルス生れのイブン・ジュバイルの旅行記がある。前者はメッカ巡礼を発心して東方世界に旅立ち28年12万kmの諸国漫遊ののちに故郷に戻った。…

【ワラタ】より

…その後14世紀を最盛期とするマリ帝国の時代に,北アフリカとマリを結ぶ交易中継地の一つとして重要性を増した。14世紀のイタリアの地誌家の記述にはワラタの名があり,アラブの大旅行者イブン・バットゥータは1352年にこの町(彼はイワーラータンと呼んでいる)を訪れて50日滞在し,その後24日歩いて当時のマリ帝国の都に赴いている。イブン・バットゥータはこの町を,サハラを南下してきて初めての黒人の国(スーダン)の町としているが,住民の大部分はムーア(モール)人の一部族と思われるマスーファ族Massufaの商人で,北アフリカからの商品がここでおろされ取引されていると述べている。…

※「イブンバットゥータ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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