日本大百科全書(ニッポニカ) 「カマキリ(昆虫)」の意味・わかりやすい解説
カマキリ(昆虫)
かまきり / 蟷螂
螳螂
mantises
praying mantids
昆虫綱カマキリ目Mantodeaの昆虫の総称、またはそのうちの1種。カマキリ目の昆虫は、三角形をしたよく動く頭部、前後に伸長した前胸とそれに続く細長い体、そして鎌(かま)状の前肢(ぜんし)という特徴ある体形をしており、体形的によくまとまった昆虫群である。直翅(ちょくし)目やナナフシ目などの昆虫群に近縁の直翅系昆虫の一群で、形態的にはゴキブリ目にもっとも近く、分類学的にも長い間、ゴキブリとカマキリは同一の目のなかに扱われていたほどである。おそらくカマキリ目はゴキブリ目から直接に進化してきたものであろうと考えられる。
[山崎柄根]
形態
頭部は逆三角形で、左右両角には大きい複眼を備え、視野を広くしている。口はかむ型である。前胸背は、原始的なものでは短いが、普通は長く伸長し、前肢もそれに伴って長くなる。前肢は太く頑丈な腿節(たいせつ)と、鋭い先端をもつ脛節(けいせつ)とで鎌状となっている。この鎌で小昆虫を捕食する。カマキリの名はこの鎌の部分とその行動とによっている。この前肢は歩行には用いられないので、とくに捕獲肢とよばれる。中肢と後肢は歩行肢で、例外なく細く長い。ときにはその腿節などに飾りの小片がつくことがある。はねは一般によく発達するが、退化してしまうものもある。腹部は平たいが、食物を多くとったものや産卵直前の雌個体などはぼってりと膨らんでいる。腹端には多節の尾角があり、産卵管は目だたない。生殖器はゴキブリ目のそれによく似ている。
[山崎柄根]
生態
一般に草上や樹上で生活するが、はねの退化する種では地上の落葉上などで生活する。肉食性の昆虫群で、とくに動いている餌(えさ)しか食べない。左右の鎌をあわせて祈っているような状態は、身近の動く小昆虫を察知し、捕獲するために構えたところである。驚かしたりすると、この鎌を左右に広げて威嚇の姿態を示す。このとき頭胸部や腹部も持ち上げて効果を強める。強い肉食性のため、交尾の際の異性も餌食(えじき)にすることがあり、交尾行動中の雄が雌に食われてしまうことがある。卵は腹端から出した泡状の塊の中に産み付け、これは産卵後まもなく固くなって卵嚢(らんのう)となる。卵嚢は木の枝や石その他に付着させる。日本の種類はこの卵嚢で越冬し、春に孵化(ふか)する。不完全変態で、1齢幼虫から成虫とほぼ同じ体のつくりをしている。
[山崎柄根]
種類
世界でおよそ1800種が知られており、日本には10種以上が分布する。緑色または褐色で大形のカマキリTenodera angustipennisと、これよりやや大きく、後翅に紫褐色部のあるオオカマキリT. aridifoliaが代表的。両種とも本州以南にみられる。ほかに、ウスバカマキリMantis religiosa、コカマキリStatilia maculata、ハラビロカマキリHierodula patelliferaなどがある。外国には金属光沢をもつものや、ランの花や枯れ葉に形を似せるものなど、風変わりのものが多い。
カマキリの方言は多く、オガメ、オガミムシ、ネギサマなど、捕獲の準備姿勢を祈祷(きとう)姿勢と見立てて、その連想に由来するものが多い。英名の由来も同様である。
[山崎柄根]