クロロキン網膜症(読み)クロロキンモウマクショウ

デジタル大辞泉 「クロロキン網膜症」の意味・読み・例文・類語

クロロキン‐もうまくしょう〔‐マウマクシヤウ〕【クロロキン網膜症】

chloroquine retinopathyクロロキン製剤の副作用で生ずる目の障害視野欠損、視力低下が主な症状失明に至る例も多い。治療法は確立していない。

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改訂新版 世界大百科事典 「クロロキン網膜症」の意味・わかりやすい解説

クロロキン網膜症 (クロロキンもうまくしょう)

薬害の一つ。リン酸クロロキンchloroquini phosphasを長期間,大量に服用したときに起こる視力障害。リン酸クロロキンは,元来マラリアの予防・治療薬であったが,種々の慢性炎症にも有効であることが知られ,とくに腎炎に対して用いられた(現在は製造が中止されている)。眼内ではとくに網膜色素上皮細胞にとり込まれ,色素上皮細胞と視細胞を変性・破壊して,ほぼ不可逆的な視機能障害を起こす。とくに黄斑部に強い変性がみられることが多い。通常,夜盲症鳥目)で始まり,しだいに中心暗点が出現し,拡大する。服用を中止してもなお進行する例もあり,発症や症状の程度は投薬量や投薬期間によるほか,個人差も大きい。1975年,被害者が国,メーカー,医療機関を訴えていた〈クロロキン訴訟〉で,東京地裁は82年,被告に重大な過失があったとする判決を下した。
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