マラリア(英語表記)Malaria

デジタル大辞泉 「マラリア」の意味・読み・例文・類語

マラリア(malaria)

マラリア病原虫赤血球に寄生して起こる熱帯性の感染症。感染症予防法の4類感染症の一。ハマダラカの媒介により感染する。寒け・震え・高熱が主症状で、間欠的に繰り返す。発熱周期が一定し、48時間ごとに起こる三日熱マラリア・卵型マラリア、72時間ごとの四日熱マラリアと、周期が不規則で、心臓衰弱や脳症を起こして生命にかかわることもある熱帯熱マラリアの四つがある。

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精選版 日本国語大辞典 「マラリア」の意味・読み・例文・類語

マラリア

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] malaria )[ 異表記 ] マラリヤ マラリア病原虫に起因する伝染病。熱帯、亜熱帯地方に多く、原虫の種類により、固有の周期性高熱を繰り返す。マラリア熱
    1. [初出の実例]「軽症の麻良利亜位には犯されき」(出典:風俗画報‐二三五号(1901)地理門)

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六訂版 家庭医学大全科 「マラリア」の解説

マラリア
Malaria
(感染症)

どんな感染症か

 マラリア原虫による感染症で、全世界の100カ国以上にみられ、年間3~5億人の罹患者と150~270万人の死亡者があるとされています。その大部分はサハラ以南のアフリカにおける小児ですが、東南・南アジア、オセアニア中南米などにも多くの発生がみられます。

 日本では旅行者がこれらの感染地で感染し、帰国して発症することが多く、国内での診断・治療の遅れが原因で死亡する例も近年みられています。日本での届け出は年間60~80人です。

 ヒトに感染するのは熱帯熱(ねったいねつ)三日熱(みっかねつ)四日熱(よっかねつ)卵形(らんけい)マラリア原虫の4種類の原虫です。いずれもハマダラカによって媒介され、蚊に刺されて感染します。一般に熱帯熱マラリア以外の経過は良好ですが、熱帯熱マラリアは、アフリカからのマラリア輸入症例の8割を占め、悪性なので、アフリカからの帰国者で発熱した場合は熱帯熱マラリアを疑う必要があります。年間1~数例の死亡例が報告されています。

症状の現れ方

 感染した蚊に刺されて1~数週間後に発熱、悪寒(おかん)戦慄(せんりつ)(震え)とともに発症します。発熱に伴い、倦怠感(けんたいかん)、頭痛、関節痛、筋肉痛、悪心・嘔吐、腹痛、下痢などがみられることもあります。熱発作は数時間続いたあとに大量の発汗とともに解熱します。

 三日熱と卵形マラリアでは48時間ごとに、四日熱では72時間ごとに熱発作が起こるのが典型的とされますが、これらの熱発作のパターンは発病初期にはあまりはっきりしません。熱帯熱の場合は熱発作のパターンが不規則だったり、発熱がずっと続いたりします。

 熱帯熱では重症化すると致命的になることがあるので、すみやかに診断し、治療を始める必要があります。重症になると脳性マラリア、急性腎不全肺水腫(はいすいしゅ)播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群(DIC)による出血傾向、重症貧血、代謝性アシドーシス、低血糖、血色素尿(けっしきそにょう)などといったさまざまな合併症を起こし、しばしば死に至ります。

検査と診断

 血液塗抹標本を色素で染めて、マラリア原虫に感染した赤血球を顕微鏡で確認する方法が一般的です。先に述べたように、ほかの3つのマラリア原虫種によるマラリアと異なり、熱帯熱は重症化して命に関わることがあるので、その区別はとても重要です。

 顕微鏡を用いた判定にはある程度の熟練を要するので、経験のある病院で行う必要があります。マラリア原虫の抗原を検出するキットもあり、専門の研究・検査機関で検査が可能です。また、PCR法により原虫のDNAを検出することも一部の研究機関でできます。

 誤診や診断の遅れは命に関わるので、慣れていない医療機関でいたずらに診断を試みるのではなく、すみやかに専門の研究所、大学、病院に相談する必要があります。

治療の方法

 マラリアは早期の適正な治療によりほとんどが治り、再発も防げます。熱帯熱以外のマラリアの急性期の治療には、一般にクロロキンが用いられます。クロロキンが入手できない場合はスルファドキシン・ピリメタミン合剤(ファンシダール)、メフロキンなどが用いられます。

 熱帯熱ではクロロキンやファンシダールへの耐性(薬が効かないこと)がよくみられるので、最初からメフロキン、あるいは経口キニーネドキシサイクリンの併用療法や、アトバコン・プログアニル合剤による治療が有効であることが多いようです。それぞれの薬には禁忌・副作用があり、素人療法は危険です。

病気に気づいたらどうする

 熱帯地方に渡航し、蚊などに刺されたり昆虫に咬まれたりした覚えがあり、発熱があった場合は、すぐに感染症の専門医を受診すべきです。前述のとおり、熱帯熱の場合、数日の診断・治療の遅れが命取りになりかねません。

予防のために

 感染流行地に滞在する場合は、早期診断・治療よりも、マラリアの感染をあらかじめ予防することが重要です。予防には感染を媒介する蚊の行動時間である夕方から朝方の外出を避ける、長袖のシャツ、長ズボンをはく、昆虫の忌避(きひ)剤を用いる、就寝時に蚊帳(かや)を使うといった一般的な注意が大切です。

 また、必要であればあらかじめ定期的に予防薬を内服することもできます。予防薬を服用する場合は、専門医の指導のもとに慎重に薬剤を選択し、過不足のない予防内服を行う必要があります。

野崎 智義

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内科学 第10版 「マラリア」の解説

マラリア(原虫疾患)

定義
 プラスモディウム(Plasmodium)属原虫(マラリア原虫)による感染症である.ヒトに感染するのはおもに表4-15-1に示した4種である.
原因・病因
 ヒトへの感染はアノフェレスAnopheles)属の蚊の刺咬時に,唾液腺中のスポロゾイト(sporozoite)が血液中に注入され起こる.その後,肝臓内・赤血球内で多数分裂を繰り返す.赤血球期に一部の原虫は生殖分化を行い,アノフェレス蚊の吸血後,蚊の腸内および漿膜側で分化し,唾液腺で再びスポロゾイトとなる.マラリア原虫はヒト・蚊の両方で複雑な増殖と分化を行う(詳細な生活環ならびに分化型の名称は図4-15-1を参照).
 主要なヒトマラリア原虫4種の形態的特徴を図4-15-2および表4-15-1に示した.三日熱,卵形マラリア原虫には休眠型(ヒプノゾイド,hypnozoite)が存在し,肝細胞内に未分裂のまま潜伏し,これが再発の原因となる.近年通常サルにおける感染のみられたP. knowlesiがヒトマラリアの原因となることが示唆され,第五のヒトマラリアといわれている.
疫学
 2010年のWHOの報告では,熱帯,亜熱帯を中心に100カ国以上に分布している.感染者数は約2億人,死亡者は年間60万人以上にもなる.感染浸淫地に居住する人口は33億人である.最も影響が大きいのはサハラ砂漠以南のアフリカであり,マラリアによる死亡の90%以上を占める.また,5歳以下の子どもが死亡者の85%以上を占める.熱帯熱マラリアによる有病率や死亡率は,蚊の駆除と治療により減少傾向にある.薬剤耐性を示す熱帯熱マラリア原虫(クロロキン・ST(スルファメトキサゾール-トリメトプリン合剤・多剤耐性)はほぼ全世界中に分布し,治療薬の選択は臨床上重要である.国内での感染はないが,感染症法で四類に含まれ,輸入感染症として年間数十例の報告がある.海外では輸血による感染,先天感染(経胎盤感染)も知られる.
病理・病態
 重症度は原虫種により異なり,おもに熱帯熱マラリアのみが重症化し,致命的になりうる.病態・病理の形成には赤血球内での原虫の増殖,原虫感染赤血球の臓器内毛細血管閉塞(sequestration),感染赤血球の破壊,サイトカインの嵐とよばれるTNF-αなどの宿主免疫の過剰応答がおもに関与する.主要症状の1つである発熱は原虫の赤血球での感染・増殖周期に依存する.たとえば三日熱では血球の破壊が48時間ごとに起こるので,ほぼ48時間ごとに発熱する.最も悪性度の高い熱帯熱マラリアの重症化は,以下に示す合併症を伴うためで,これらの合併症を1つ以上伴う場合を重症マラリア(severe and complicated malaria)という.また,赤血球の種々の先天異常(HbS,鎌形赤血球症,サラセミアなど)はマラリア原虫に対する抵抗性を増大させる.
臨床症状
 潜伏期は種により異なり,熱帯熱で6~21日である.熱帯熱の定型的な急性発症の場合,全身倦怠感,頭痛,食欲不振,筋肉痛などが顕著にみられる.主症状は発熱,肝脾腫,貧血である.熱発作のときは悪寒,場合によっては戦慄を伴う.熱発作は数十分から数時間継続し,大量の発汗とともに解熱する.熱帯熱以外は一般に熱発作の間隔が次第に延長し,慢性化する.症状再出現は再発(relapse)または再燃(recrudescence)による.再発とは肝臓のヒプノゾイトの増殖によるもので,三日熱マラリア,卵形マラリアにみられる.再燃とは赤血球中に残存するメロゾイトによるもので,熱帯熱と四日熱マラリアに観察される.熱帯熱マラリアによる重症マラリアの合併症で重要なのは痙攣・昏睡などの神経症状を示す脳マラリア(cerebral malaria)で,特にアフリカにおける幼児の主要な死亡原因である.また,感染赤血球の急速な溶血によるヘモグロビン尿,高度の黄疸,低血糖(hypoglycemia),急性肺水腫(acute pulmonary edema),腎不全(尿細管壊死,acute tubular necrosis)も重要である.妊産婦に対するマラリアの影響も重要で,熱帯熱のみならず,最も感染者が多い三日熱も関与する.
診断・鑑別診断
 海外の感染浸淫地への渡航歴などを把握することが重要である.診断の基本は患者血液から原虫あるいは核酸や抗原を検出することによる.顕微鏡による観察方法としてはGiemsa染色による薄層塗抹法と厚層塗抹法があり,主として前者は原虫種の同定に,後者は感染した赤血球の血中濃度が低いときの検出に用いられる.アクリジンオレンジなどの蛍光色素を使用した同定も簡便である.マラリア原虫のhistidine-rich protein 2,アルドラーゼ,乳酸脱水素酵素に対するモノクローナル抗体を利用した迅速抗原検出法も販売されている.PCRによるマラリア原虫種鑑別も可能である.鑑別疾患としては,感染浸淫地に存在する熱性疾患のすべてが対象となる.
治療
 感染した原虫が熱帯熱マラリア原虫であるかどうか,合併症の有無などで用いる薬剤は異なっている.また,患者が感染した地域における薬剤耐性の存在を考慮すべきである.基本的な治療薬剤とその標準的投与量に関しては表4-15-2にまとめた.メフロキン以外の多くの抗マラリア薬の入手は稀少感染症薬の保管施設を通じて行う.
予防
 蚊の刺咬を防ぐことが最重要である.そのため流行地では殺虫剤をしみ込ませた蚊帳(insecticide-impregnated bed net)が用いられ,感染率の低下などに寄与している.予防投薬を過信すべきではないが,メフロキンなどが使用されている.ファンシダール(ST合剤)を予防投薬に用いて重篤な副作用が出現した例もあり,予防投薬は必ず専門家の指示に基づいて行う.[野崎智義]

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改訂新版 世界大百科事典 「マラリア」の意味・わかりやすい解説

マラリア
malaria

アノフェレス属のカであるハマダラカによって媒介される原虫性疾患。その感染部位は肝細胞と赤血球内で,肝機能にはとくに変化は出ないが,赤血球は破壊され貧血におちいる。そのほか肝臓と脾臓の腫張が起こる。病原体は熱帯熱マラリア原虫,三日熱マラリア原虫,卵形マラリア原虫および四日熱マラリア原虫の4種類がある。発熱をおもな徴候とする病気であり,各原虫により特徴的な発熱発作がある。

 熱帯熱マラリアでは発熱時悪寒だけで戦慄(せんりつ)がなく,発熱は毎日ある。そのため他の疾患と紛らわしいが,5日過ぎると急に意識障害,腎不全,黄疸などが起こり病状が悪化する。死亡例はほとんど熱帯熱マラリアで,末期には全身性血管内凝固症候群を起こし出血傾向が著しくなる。別名,悪性マラリアといわれる。三日熱マラリア,卵形マラリアおよび四日熱マラリアでは,発熱発作時歯がカチカチ鳴るほどの悪寒戦慄に次いで39~40℃に達する高熱,これが6~10時間続くと強い発汗があり下熱する。このように寒期,暑期,発汗期が歴然としている。発熱間隔は発病初期は毎日,その後三日熱マラリアと卵形マラリアは1日おき,四日熱マラリアは2日おきになる。死亡例はなく良性である。

 熱帯熱マラリア原虫は,48時間ごとに分裂を繰り返して人体内で無制限に増殖する。他のマラリア原虫は感染赤血球をえり好みして一定度以上増殖しないが,肝細胞内に二次性赤外型原虫として長く残り,再発を起こす。四日熱マラリア原虫は感染後36年間も潜在した記録がある。三日熱マラリアと卵形マラリアは約3年間再発を起こす。

 治療にはクロロキン,キニーネ,ファンシダール,MP錠などがあるが,近年クロロキン耐性熱帯熱マラリアが各地に出現している。また,クロロキンはクロロキン網膜症を起こすことから,近年,製造が中止された。根治療法にはプリマキンを用いる。予防としてはハマダラカの撲滅が重要な課題となるが,個人的には流行地滞在中とそこを離れてから4週間,ファンシダール,MP錠,ピリメサミンなどを内服する。
執筆者:

マラリアは世界史の殺し屋の旗頭であり,長いあいだ人類の死因の第1位であった。マラリアという名称は〈マラ・アリアmala aria〉つまり〈悪い空気〉というイタリア語に由来し,寄生原虫についての知識は20世紀までわからなかったものの,湿地や沼沢地とこの病気との関係については経験的に知られていた。もともと熱帯の風土病であったマラリアは,ヨーロッパとオリエントとの交流をとおして,まずギリシアにもち込まれ,つづいて南イタリアのギリシア植民地に広がった。ギリシア・ローマ文明の衰退の一因はマラリアにあるともいわれ,マラリアは民族の肉体的な衰弱のみでなく,精神的な活力をも喪失させる重要な要因となった。とくに土地が浸食され,沼沢地になると,きまってマラリアが猖獗(しようけつ)し,このため死の町と化した例がローマにもいくつかある。いわゆる〈ローマの道(ローマ道)〉は〈マラリアの道〉でもあり,ローマにおけるキリスト教の拡大はマラリア禍による苦難の時期とも一致している。中世から近世にかけてのヨーロッパにおける戦場において,マラリアは重要な役割を演じ,多くの軍隊の運命を左右した。第1次大戦および第2次大戦においても,マラリアは人命を奪った大きな原因の一つであった。とくに南方の日本軍兵士がこれに苦しめられたことは記憶に新しい。

 日本では,古くは〈瘧(おこり)〉といわれ,平安時代から諸書に記録されている。平清盛が高熱を出して死んだのは,一説にはマラリアだといわれる。江戸時代には,気候が寒冷であったため,マラリアを媒介するカの生息に適さなくなったことからか,古代・中世より少なくなったと考えられるが,農・山・漁村では長くこの病魔に苦しめられた。最近のマラリア撲滅運動の結果,かなり消滅しているが,それでもアジア,アフリカの多くの地域でいまだに猛威をふるっており,これらの地域の発展を阻む最大の要因となっている。
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百科事典マイペディア 「マラリア」の意味・わかりやすい解説

マラリア

マラリア原虫による伝染病。原虫の種類により三日熱マラリア,四日熱マラリア,卵形マラリア,熱帯熱マラリアなどと呼ばれる。熱帯,亜熱帯に多く,温帯にも若干発生するが,日本では現在はほとんどみられない。ハマダラカが媒介し,その刺口から侵入した原虫が赤血球内で増殖し,これを破壊するときに戦慄(せんりつ)とともに高熱を発し,やがて解熱し,これが反復する。発作間隔は三日熱マラリアと卵形マラリアは48時間,四日熱マラリアは72時間,熱帯熱マラリアは不定期。一般に高度の貧血をきたし,肝臓や脾臓がはれ,熱帯熱マラリアでは脳梗塞(こうそく)などの脳症状をきたす。キニーネ,メフロキン,クロロキン,プリマキンなどの抗マラリア薬で治療。
→関連項目カダヤシトッケイ届出伝染病ハーネマンハマダラカ脾腫輸血ラブランロスワグナー・フォン・ヤウレッグ

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家庭医学館 「マラリア」の解説

まらりあ【マラリア Malaria】

[どんな病気か]
 マラリア原虫を保有しているハマダラカという蚊(か)に刺されて感染する病気の総称です。原虫の種類によって、三日熱(みっかねつ)マラリア、四日熱(よっかねつ)マラリア、熱帯熱(ねったいねつ)マラリア、卵型(たまごがた)マラリアに分類されています。
 マラリア原虫は熱帯、亜熱帯地方に多く分布しており、日本国内にはいませんが、海外で感染した人がもち帰る輸入マラリアが増えています。
[症状]
 発熱発作(ほっさ)、貧血(ひんけつ)、脾臓(ひぞう)の腫(は)れ(脾腫(ひしゅ))の3つが主症状ですが、原虫の種類によって経過が異なります。
 発熱発作はおもに夕方、急激に40℃ぐらいの発熱が嘔吐(おうと)、下痢(げり)をともなっておこりますが、4~5時間後には発汗とともに解熱(げねつ)します。
 この発熱発作は、三日熱と卵型では48時間ごとに、四日熱では72時間ごとに、熱帯熱では36~48時間ごとにくり返されます。発作はしだいに軽くなり、慢性化して脾腫と貧血が目立つようになります。
 とくに熱帯熱は悪性マラリアともいわれ、早期に治療を行なわなければ、心臓衰弱をきたしたり、脳性マラリアになって死亡することもあります。
[検査と診断]
 血液検査を行ない、マラリア原虫の存在が確認されれば診断がつきます。
[治療]
 クロロキン薬、ピリメタミンとサルファ剤の合剤、キニーネのいずれかを1~5日間内服した後、再発を防ぐためにプリマキンを2週間続けて内服します。
 これらの薬が効かない薬剤耐性(やくざいたいせい)マラリアのこともありますから、以上の薬のほか、メフロキン剤、ハロファントリン剤などが使われることもあります。
[予防]
 流行地にでかけたときは、蚊に刺されないよう防護策を講じましょう(室内では蚊取り線香を使い、寝るときには蚊帳(かや)を吊(つ)る、外出時は蚊除けのスプレーを使用するなど)。
 薬を予防内服するのも有効ですが、渡航先によって使用薬剤が異なります。出発前に専門医に相談してください。

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栄養・生化学辞典 「マラリア」の解説

マラリア

 マラリア原虫によって起こされる疾病.熱帯地方に多くみられる.脳障害を起こすことがある.

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世界大百科事典(旧版)内のマラリアの言及

【医学】より

…ミアスマは大別して植物性のミアスマと動物性のミアスマに分けられた。植物性ミアスマとは,沼地や停滞している川などに木の葉など植物性の物質が沈殿,腐敗することによって発生するもので,これによっておこる伝染病の典型はマラリアだと考えられていた。水はけをよくして,このミアスマが発生しなくなるようにすればマラリアは減退する。…

【瘧】より

…夏の風邪や山間の悪気などの外邪によって起こされるとされ,湿瘧(しつぎやく)とか痎瘧(がいぎやく),瘴瘧(しようぎやく)など多くの病名が記載されている。他の病気も含まれていたであろうが,主体はマラリアと考えられる。〈おこり〉はこの病気の日本名で,江戸時代まではよく発生した記録がある。…

【キニーネ】より

…塩酸塩,硫酸塩など水溶性塩類の味はきわめて苦い。合成抗マラリア薬が開発された1930年ころまでキニーネは唯一のマラリア治療薬であった。現在でも他の薬剤に耐性のマラリアの治療に使われる。…

※「マラリア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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