夜盲症(読み)ヤモウショウ

デジタル大辞泉 「夜盲症」の意味・読み・例文・類語

やもう‐しょう〔ヤマウシヤウ〕【夜盲症】

薄暗くなると物が見えにくくなる状態。網膜にある桿状体かんじょうたい機能障害によって暗順応に遅延が起こるもの。ビタミンA欠乏や網膜色素変性症などでみられる。鳥目とりめ

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精選版 日本国語大辞典 「夜盲症」の意味・読み・例文・類語

やもう‐しょうヤマウシャウ【夜盲症】

  1. 〘 名詞 〙 網膜の光覚の減弱または暗順応の遅延により、暗い所では視力が著しく低下する状態。先天性のものとビタミンA欠乏による後天的なものがある。鳥目。雀盲(じゃくもう)。夜盲。〔現代術語辞典(1931)〕

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六訂版 家庭医学大全科 「夜盲症」の解説

夜盲症
(眼の病気)

 俗に「鳥目(とりめ)」といわれる症状ですが、専門的には「暗順応(あんじゅんのう)障害」ともいいます。人間の眼は、明るさの異なるさまざまな環境のなかで物を見ることができます。真夏の太陽の下でも眼がくらんで見えないということはないし、夜中星明りでも何とか物を見ることができます。

 それは主として、網膜に違う明るさのなかではたらく2種類の細胞をもっていることによります。明るい所ではたらく細胞(錐体(すいたい)細胞)と暗い所ではたらく細胞(杆体(かんたい)細胞)があるおかげで、いろいろな明るさのなかで物を見ることができるのです。

 明るい所から急に暗い所に入ると(たとえば映画館などで)すぐには見えませんが、徐々に眼が慣れてきて5分もすれば見えるようになります。その過程を暗順応といいます。その間に、見るはたらきの主役錐体細胞から杆体細胞へとバトンタッチされるのです。

 夜盲症は、杆体細胞の機能が悪くなり暗順応ができなくなったために起こる症状です。明るい所から暗い所に入った時、日暮れ時などの状況で自覚したり、周囲の人が気づくことが多いようです。

 夜盲症の原因となる病気の代表が網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)です。ほかにも、遺伝的に杆体細胞の機能が障害される先天性停止性夜盲、今では少なくなりましたがビタミンA欠乏症などで夜盲症が起こります。ビタミンA欠乏による夜盲症は、終戦後など栄養不足が深刻だった時代にはめずらしくなかったようですが、今では重症肝硬変などでたまにみられる程度です。

 錐体細胞の機能が悪くなると、明るい所へ出た時にひどくまぶしくて見にくいという逆の現象が起こります。「昼盲(ちゅうもう)」と呼ばれ、杆体細胞から錐体細胞へのバトンタッチができない(明順応(めいじゅんのう)障害という)ために起きる症状です。黄斑ジストロフィでは主要な症状ですが、網膜色素変性症でもよくみられます。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「夜盲症」の意味・わかりやすい解説

夜盲症
やもうしょう
night blindness

夕方、薄暗くなると物が見えにくくなる状態をいい、鳥目(とりめ)とか晩盲などともよばれる。暗い所で明暗の差を感知する網膜桿(かん)状体の機能障害に基づく光覚の減弱または暗順応の遅延がみられるもので、種々の疾患によっておこる。

 夜盲症は先天性と後天性に大別される。先天性夜盲症には、昼間は異常を認めず進行しない先天性停止性夜盲症と小口(おぐち)病があり、両者は眼底異常の有無で区別される。小口病は、小口忠太(ちゅうた)が報告した独特の眼底像を呈する先天性停止性夜盲症である。すなわち、眼底全体が帯黄白色で、はげかかった金箔(きんぱく)のように見え、反対に網膜血管はやや黒ずんで見える。この目を遮光しておくと、数時間のうちに眼底所見がほとんど健常と同様になる。これを水尾‐中村現象という。暗順応経過は非常に遅延するが、水尾‐中村現象の発現にわずかに遅れて光覚が増進し、明るい所での視機能には異常が認められない。また、先天的素因によって幼少または青春期から徐々に進行し、視野狭窄(きょうさく)や視力低下を伴う網膜色素変性症、網膜脈絡膜萎縮(いしゅく)症などでも夜盲がみられる。

 後天性夜盲症には特発性と続発性がある。特発性夜盲症はビタミンAの不足によって桿状体内の視紅(しこう)(ロドプシン)の再合成が妨げられ、暗順応が遅延するものである。続発性(症候性)夜盲症は一般に網膜脈絡膜疾患にみられるが、視神経炎や緑内障でも暗順応が障害され、光学的に縮瞳(しゅくどう)時、白内障などで入射光線の量が少なくなったりしてもおこる。一般に夜盲を主訴とする疾患のうち、もっとも多いのは網膜色素変性症である。

[大島 崇]

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百科事典マイペディア 「夜盲症」の意味・わかりやすい解説

夜盲症【やもうしょう】

明るい所から暗い所に移ると,初めは物がはっきり見えないが次第に見えるようになる。これを暗順応といい,杆(かん)体の障害により暗順応が不能,または遅延する状態を夜盲症(俗に鳥目)という。先天性と後天性があり,前者には眼底が金色に輝いて見える小口(おぐち)病,10代ないし20代から発症,進行し,失明に至る網膜色素変性などがある。後天性のなかで最も重要なのは特発性夜盲症で,ビタミンA欠乏によるロドプシンの不足による。肝油やビタミンA剤の投与で治療。ビタミンA欠乏と夜盲症の関係を発見したのは,1925年アメリカの生理学者L.S.フレデリシアとE.ホームである。
→関連項目ビタミンビタミン欠乏症

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家庭医学館 「夜盲症」の解説

やもうしょう【夜盲症 Night Blindness】

[どんな病気か]
 明るい場所から急に暗い場所に入ると、一時的にものが見えなくなりますが、そのうち網膜の感度が上昇して、だんだん見えるようになってきます(暗順応(あんじゅんのう))。しかし、網膜の反応が悪いと、暗いところではものが見づらくなります。この状態を夜盲といい、先天夜盲(生まれつき)と後天夜盲(ビタミンAの欠乏などが原因)があります。
 先天夜盲は遺伝性で、症状が進行しない停止性夜盲と、徐々に病状が進行する進行性夜盲とがあります。
[症状]
 後天性の場合は暗いときに見づらくなることで気づきますが、先天性の場合は物心がつくころに気づくことが多く、生まれつき視力障害が強い場合は、家族が気づいて眼科を受診することが多いようです。
[治療]
 視力検査、視野検査、暗順応検査(暗いところで、どれだけ対応できるかを調べる)、網膜電位検査、眼底検査などが行なわれます。
 後天性のものに関しては原因疾患の治療が必要です。
 先天性のものには現在のところ有効な治療法はなく、暗順応を改善させる薬の内服が行なわれます。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「夜盲症」の意味・わかりやすい解説

夜盲症
やもうしょう
night blindness

とりめ。光覚が弱まるか,暗順応が遅延する状態をいい,夜間や暗所で視覚が低下する。先天性と後天性に分けられ,さらに先天性夜盲症は停止性と進行性に分けられる。先天性停止性のものには小口病,白点状網膜症などがあり,先天性進行性のものでは網膜色素変性症が代表的である。後天性のものは,ビタミンAの欠乏症状としての特発性夜盲のほか,杆状体機能の低下によるびまん性網脈絡膜萎縮,強度近視,眼球鉄症,緑内障の末期などで夜盲が認められることがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「夜盲症」の意味・わかりやすい解説

夜盲症 (やもうしょう)

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栄養・生化学辞典 「夜盲症」の解説

夜盲症

 俗に鶏目という.光の量が少ない状態で,視力が弱いか,ない症状.暗順応が障害された状態.後天的には,ビタミンA欠乏で起こる.

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世界大百科事典(旧版)内の夜盲症の言及

【光覚】より

…この器械を順応計といい,認知できる明るさの程度と時間経過を測定する。光覚の障害では,網膜の感度が上昇しないため暗順応が障害され,暗所,夜間の視力が不十分となる夜盲症(鳥目),明順応が障害されるため,通常の光量でも強いまぶしさを感じ,視力が下がる昼盲などがある。なお,視力表記では,明暗の弁別ができる程度の状態を〈光覚弁〉という。…

【鳥目】より

…医学的には夜盲症という。暗順応の障害により暗所での視力が著しく悪い状態。…

【ビタミン】より


【各種のビタミン】
 以下,主要なビタミンの生理作用,欠乏・過剰症について解説する。
[ビタミンA]
 抗夜盲症因子として発見された脂溶性ビタミンであり,天然にはレチノールretinol(ビタミンA1)ならびに3‐デヒドロレチノール3‐dehydroretinol(ビタミンA2)とそれらの誘導体がある。ビタミンAは不安定で,空気,光,熱,酸によって,異性化,分解,重合などの変化をひき起こす。…

【目∥眼】より

…(1)循環器疾患(高血圧症,動脈硬化),(2)血液の疾患(白血病,貧血),(3)呼吸器疾患(サルコイドーシス),(4)内分泌疾患(バセドー病,甲状腺機能低下症,糖尿病),(5)神経系の疾患(脳腫瘍,脳動脈炎,脳出血),(6)感染症(梅毒,淋病,トキソプラズマ症,風疹),(7)耳鼻咽喉疾患(副鼻腔腫瘍,中耳炎),(8)免疫病(膠原(こうげん)病,エリテマトーデス,リウマチ)などである。このほか,全身の栄養状態も関係が深く,ビタミンA欠乏症による夜盲症をはじめとして,ビタミンB1欠乏症,ビタミンB2欠乏症も眼症状を現す。また,妊娠中毒症も視力障害をひき起こす。…

※「夜盲症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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