タマナヤガ(英語表記)Agrotis ipsilon

改訂新版 世界大百科事典 「タマナヤガ」の意味・わかりやすい解説

タマナヤガ
Agrotis ipsilon

鱗翅目ヤガ科の昆虫。ほとんど全世界に分布。真の原産地は明らかでないが,このような種はつねに多食性で,人為的な環境によく耐え農作物害虫となることが多い。開張約5cm。前翅灰褐色後翅白色で,翅脈と外縁部のみが暗色を呈する。成虫には多少の移動性があり,発生地から拡散する習性がある。日本全国に見られ牧草地に集中的な被害を生ずることがあるが,東北地方以北では越冬不能といわれる。本州中部では6~7月ころから秋にかけ出現する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タマナヤガ」の意味・わかりやすい解説

タマナヤガ
たまなやが / 玉菜夜蛾
the dark sword grass
[学] Agrotis ipsilon

昆虫綱鱗翅(りんし)目ヤガ科に属するガ。ほとんど全世界に分布するため、原産地は明らかでないが、南アメリカとする説もある。はねの開張50ミリメートル内外。前翅は灰褐色、後翅は白色であるが翅脈と外縁付近は暗色を帯びる。幼虫は草食性で、しばしば作物飼料作物に被害を与えるほか、成虫には中距離の移動性があり、造成牧草地に着地したガから幼虫の大発生をみることがある。日本では北海道以外に広く分布するが、越冬可能な北限はおよそ東北地方南部であるという。本種は、ヤガ科のうちのモンヤガ亜科に属し、この亜科のガはユーラシアの内陸草原、アフリカのサバナ地帯に多数の種を分布する。幼虫は土中の地表近くに潜み、夜間に活動して草本や農作物の根際をかみ切って食べるのでネキリムシともよばれている。

[杉 繁郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タマナヤガ」の意味・わかりやすい解説

タマナヤガ
Agrotis ipsilon; black cutworm

鱗翅目ヤガ科。幼虫が農作物の大害虫となることで知られるヤガ。成虫の前翅開張幅は 44~59mm。体は太く,前翅は暗褐色で各種の紋があるがあまり目立たない。後翅はやや透き通った白褐色で周縁部は暗色。日本全土にごく普通にみられ,成虫は6~10月にかけて2~3回出現する。幼虫は5月頃老熟し,マメ類,ナタネ,ジャガイモ,ネギ,トウモロコシ,ムギなど手当り次第に食害する。昼間は土中に潜伏し,夜間外に出て苗の根ぎわを噛み切り,地中に引込んで食べるので,ネキリムシとも呼ばれる。日本のほか台湾,朝鮮半島,中国,ヨーロッパ,オーストラリア,北アメリカに分布する。

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