トウツルモドキ(英語表記)Flagellaria indica L.

改訂新版 世界大百科事典 「トウツルモドキ」の意味・わかりやすい解説

トウツルモドキ
Flagellaria indica L.

トウツルモドキ科の多年生つる植物。全体無毛,やや木質化した茎は長くのび,樹木などに覆いかぶさり,ヨシに似た葉をつける。葉の先端は巻きひげとなって他にまといつき,葉身は披針形で長さ15~25cm,葉柄は鞘(さや)状となって茎を抱く。枝端に円錐花序を出し,小さな6弁の白色の花をつける。花期は熱帯では周年。果実は球形の核果で径6mmほど,紅熟する。インド,東南アジアから南太平洋のサモアまで分布し,海岸の近くに多い。小笠原と沖縄にも分布する。茎葉に一種の芳香があり,マレーシアではココヤシ油の中でつき砕いて香油をつくる。茎はそのまま,あるいは裂いて結束料やマット編みに使う。

 トウツルモドキ科Flagellariaceaeは単子葉植物のなかの特異な群の一つで,トウツルモドキ属と他の2属(別科とされることもある)だけからなる小さな科で,南半球に分布するレスティオ科に近縁なものと考えられている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トウツルモドキ」の意味・わかりやすい解説

トウツルモドキ
とうつるもどき / 籐蔓擬
[学] Flagellaria indica L.

トウツルモドキ科(APG分類:トウツルモドキ科)の藤本(とうほん)(つる植物)。幹は細長く伸びて、約15メートル。葉は狭披針(ひしん)形で長さ10~20センチメートル、先は線形に伸びて巻きひげ状となり、他物に絡まる。枝先に円錐(えんすい)花序をつくり、小さな黄白色花を多数開く。花被片(かひへん)は6枚、3枚ずつ内外2輪に並ぶ。雄しべは6本。雌しべは1本で、花柱は3裂する。果実は球形で径4ミリメートル、熟すと黄紅色になる。湿気の多い水辺に生え、小笠原(おがさわら)、沖縄、およびアジア、アフリカの熱帯に広く分布する。名は、茎の形がヤシ科のトウに似るのでいう。

 トウツルモドキ科Flagellariaceaeは約3属10種知られ、すべて熱帯に分布する。

[山崎 敬 2019年9月17日]

 APG分類でもトウツルモドキ科であり、それによればトウツルモドキ属1属からなり、5種あるとされる。

[編集部 2019年9月17日]

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