翻訳|Fleet Street
イギリス,ロンドン中心部の通りの名称。テンプル・バーからラドゲート・サーカスまで,ホーボーン通りとビクトリア・エンバンクメントの中間を両通りと並行して東西に走る。《タイムズ》をはじめとするイギリスの主要新聞社,地方紙や外国の新聞社の支局などが密集していることで知られ,〈フリート街〉という名称は〈新聞界〉ないしジャーナリズムの代名詞となっていたが,1980年代後半にテムズ川北岸のワッピングWappingに《タイムズ》などが移転し,この地区が新聞界の中心になりつつある。地名そのものは〈フリート溝〉と呼ばれた下水溝に由来する。通りのほぼ中央を北へ入ると,18世紀の文壇を牛耳ったジョンソン博士の家があり,東のはずれ(ファリンドン通り)を北に行くと,かつてのフリート監獄の跡がある。この監獄はロンドン大火(1666)とゴードン暴動(1780)で破壊され,そのつど再建されたが,1845年ごろ廃止された。ここでは,負債が払えず入獄した牧師がもぐりの結婚式をつかさどることが多く,〈フリート街の結婚Fleet Marriage〉という言葉も生まれたが,1753年の法改正で非合法化された。フリート街の西端近くにも,ブライドウェル監獄があった。
執筆者:川北 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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