ワンサンアンギーナ(読み)わんさんあんぎーな(英語表記)Vincent's angina

翻訳|Vincent's angina

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワンサンアンギーナ」の意味・わかりやすい解説

ワンサンアンギーナ
わんさんあんぎーな
Vincent's angina

フランスの医学者バンサンHyacinthe Vincent(1862―1950)が1898年に詳しく記載した疾患で、紡錘状桿菌(かんきん)と口内スピロヘータの重複感染によっておこる偽膜性口峡炎をいう。健康状態の不良、むし歯、口腔(こうくう)内の不潔などが誘因となり、15~30歳の男性に多い。多くは一側の扁桃(へんとう)の上極部に灰白色の偽膜が付着した潰瘍(かいよう)が初発する。潰瘍は比較的深く、辺縁は不正急峻(きゅうしゅん)で噴火口状になり、潰瘍の周囲は暗赤色である。病変は口蓋(こうがい)弓、咽頭(いんとう)壁、軟口蓋、口頬(こうきょう)粘膜、歯肉粘膜、舌にまで及ぶ。咽頭痛、嚥下(えんげ)痛、放散性耳痛、口臭などがあるが、局所の病変所見ほどひどくないのが特徴でもある。全身状態も良好で、ときに頸(けい)部リンパ節が腫脹(しゅちょう)して圧迫すると痛むことがある。治療は口腔内を清潔に保ち、抗生物質、含嗽(がんそう)剤(うがい薬)、口中剤を使用する。潰瘍部は薬剤や電気で焼灼(しょうしゃく)する。通常数日から3週間くらいで自然治癒するが、ときに肺炎敗血症などの重症合併症をおこしてくることもある。

 なお、バンサンとは別に1894年に記載したプラウトW. Plautにちなんでプラウトアンギーナ、あるいはプラウト‐ワンサンアンギーナともよばれる。

[河村正三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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