十種香・十炷香（読み）じしゅこう

精選版 日本国語大辞典

じしゅ‐こう ‥カウ【十種香・十炷香】

(「じしゅごう」とも)

[1] 〘名〙

① 一〇種の香の名。普通、栴檀(せんだん)・沈水(じんすい)・蘇合(そごう)・薫陸(くんろく)・鬱金(うこん)・白膠(はっこう)・青木(せいぼく)・零陵(れいりょう)・甘松(かんしょう)・鶏舌(けいぜつ)をいう。

② いろいろな香材を混ぜた、焼香用の香。

※浄瑠璃・本朝二十四孝（1766）四「絵像のそばで十種香の、煙も香花となったるか」

③ 香道の最も基本的な組香。一、二、三と呼ばれる三種の香を三包ずつ、さらに客香と呼ばれる一種を一包の都合一〇包の香を順不同として香炉に炷(た)き、その異同を聞き分けるもの。

※言国卿記‐文明八年（1476）八月二六日「十種香御興行あるべきとて御用意也」

④ 香道の代表的な一〇種の組香。志野流内十組香、御家流古十組香など。

※咄本・友だちばなし（1770）「それは、じしゅごうの箱の鍵ぞ、やられぬ」

⑤ 香道をいう。

※浮世草子・西鶴織留（1694）一「十炷香(ジシュカウ)は山口円休に聞覚へ」

[2] 浄瑠璃「本朝廿四孝」の四段目切「謙信館」の前半の通称。謙信の娘八重垣姫が許婚(いいなずけ)武田勝頼の絵像の前で、十種香をたいて回向するが、花作り簑作が真実の勝頼と知って恋心を見せる場面。

じっしゅ‐こう ‥カウ【十種香・十炷香】

〘名〙 (「じっしゅごう」とも) ＝じしゅこう（十種香）〔日葡辞書（1603‐04）〕

※浮世草子・世間娘容気（1717）一「十炷香(シュガウ)歌がるた琴三味線絵かき花むすび、すべて女のなぐさむ程の事は見はて仕つくし」

出典　精選版 日本国語大辞典