アイスフォール(読み)あいすふぉーる(英語表記)ice fall

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アイスフォール」の意味・わかりやすい解説

アイスフォール
あいすふぉーる
ice fall

氷河が滝のように急な傾斜で流下する部分のこと。氷瀑(ひょうばく)ともいう。カールKar(ドイツ語)の末端部など、氷河底の基盤岩に急傾斜の階段状地形がある場所で生じる。氷河は強い伸長応力を受けて割れ、多数のクレバスcrevassesをつくる。縦横に走るクレバスに囲まれた氷の塊は巨大な柱や塔のような形状を示し、セラックsérac(フランス語)とよばれる。セラックはきわめて不安定で、氷河の流動に伴って崩壊するので、セラック帯をつくるアイスフォールは、登山上の障害となることが多い。アイスフォールの下流側には、下流側に凸面を向けたオーギブ(オージャイブ)ogiveとよばれる規則的な横縞(よこじま)模様が氷河表面にできることがある。冬にアイスフォールを通過した氷は白いが、夏に通過した氷は融解と凍結とを繰り返すので青い氷となる。オーギブはこうした氷河の流動から生じた模様で、オーギブの間隔(50~200メートル)は、氷河が1年間に流動する距離に相当する。

[小野有五]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アイスフォール」の意味・わかりやすい解説

アイスフォール
icefall

氷瀑とも呼ぶ。山岳氷河河床が急に傾斜を増すところで,氷河の流速変化が生じクレバス (氷河の亀裂) やセラック (氷塔) を生じる。常に崩壊の危険にさらされているため,登路とするにはやっかいな障害となる。

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