改訂新版 世界大百科事典 「アカハネムシ」の意味・わかりやすい解説
アカハネムシ
Pseudopyrochroa vestiflua
甲虫目アカハネムシ科の昆虫。体長12~17mm。北海道,本州,四国,九州のほか,千島,サハリンなどにも分布する。北海道や本州東北部を除いて,おもに山地の森林に生息する。5月ごろから出現し,夏の間,森林の葉上や倒木上に見られる。アカハネムシ科Pyrochroidaeは世界から100種余りが,日本からも20種ほどが知られている。アカハネムシを含めて,この科には上翅のみが赤色で,体が黒色のものが少なくない。このため英名もcardinal beetleまたはfire-coloured beetleである。触角は櫛(くし)形で,とくに雄では櫛の歯にあたる部分が長い。成虫はいずれも樹皮のある枯木に産卵し,幼虫は樹皮と材部の間の組織を食べ進む。したがって幼虫の体は著しく扁平である。幼虫の腹部の末端節は茶褐色に硬化し,1対の尾突起となっている。幼虫で越冬し,4月から6月にかけて樹皮下で蛹化(ようか),約3週間後には成虫となって枯木から現れる。花に飛来した成虫は花粉やみつを食べていると考えられる。また葉上で昆虫を捕食することもある。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報