日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブラソコムツ」の意味・わかりやすい解説
アブラソコムツ
あぶらそこむつ / 油底鯥
escolar
[学] Lepidocybium flavobrunneum
硬骨魚綱スズキ目クロタチカマス科に属する海水魚。世界中の温帯と熱帯海域に分布し、日本近海では南日本の太平洋側でみられる。全長1.5メートル、体重45キログラムになり、体色は黒い。尾柄(びへい)部の中央に隆起が一つあり、その上下に別の隆起がある。側線は背腹へ波状に大きく曲がり、鱗(うろこ)は大小2種類で、大鱗(りん)は小鱗で囲まれるなどの顕著な特徴をもつ。昼は深海にすみ、夜に浮上してマグロ延縄(はえなわ)などで漁獲される。干物にされるほか、養魚や家畜の飼料に加工されるが、筋肉に脂肪分が19%と多く、その90%が消化不良のワックス成分であるため、食べると下痢をおこすことがある。このワックスは、脂肪酸と一価アルコールのエステルで、本種を含めハダカイワシ類、ウケグチダラ、バラムツ、ハクジラ類など、激しい垂直運動をする種類に多いが、これは、急激な水圧の変化でも、ガス交換を円滑に行って浮力を調節するのに、ワックスが関与しているという学説もある。
[落合 明・尼岡邦夫]