ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アラブ音楽」の意味・わかりやすい解説
アラブ音楽
アラブおんがく
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かつてのイスラム帝国の範囲のうち,イランとトルコ,スペインを除き,アラブを主とする地域の音楽。この地域には,マシュリクと呼ばれる地域(おもにイラク,シリア,レバノン,ヨルダン,エジプト)と,マグリブと呼ばれる地域(モロッコ,アルジェリア,チュニジア,リビア)の二つの伝統がある。これらの国々には,イラクのクルド族やエジプトのヌビア人のような非アラブの人々,またキリスト教徒やユダヤ教徒などイスラム以外の伝統をもつ少数派の人々も住み,それぞれの民俗文化は多様である。音楽文化も各民俗音楽を基底として,さまざまな内容をもつが,過去のイスラム帝国時代に文化を共有したため,広く共通した要素もみることができる。(1)宗教音楽 本来イスラムでは音楽を認めないが,音楽的なものとして,祈りの時間の呼びかけであるアザーンと,コーランの朗唱がある。また,スーフィーは,ジクルと呼ばれる音楽的な儀式を行う。(2)古典的芸術音楽にみられる理論体系と実践 イスラムの征服が東西にのびるとともに各地の音楽を吸収し,ギリシア音楽理論を受け継いだ音楽文化は,アッバース朝になると黄金期を迎え,マウシリー父子,キンディーらのすぐれた音楽家,音楽理論家を輩出した。のち,イスラム文化は沈滞期に入り,その音楽の中心地はトルコへ移った。しかし,彼らによって大成されてきた音楽理論との関連は今日のアラブ古典音楽の中にみられ,演奏はマカームと,イーカーアまたはウスールと呼ばれるリズム型に基づいて行われる。即興演奏が重んじられ,単旋律中心でメリスマ的,中間音程をもつ。楽器にはウード,カーヌーン,ラバーブ,ナーイ,タブラなどがある。
執筆者:粟倉 宏子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…トルコ語の場合のようにローマ字化して用いるところもある。独自の記譜法が発展しなかった理由は,実際の音楽で音を一つ一つ記しておく必然性がなかったためであり,即興性の強いアラブ音楽では,旋律を規定する旋法(マカーム)とリズムを規定する概念(イーカーア)と歌詞が示されれば,実際の演奏が成り立つからである。また,リズムについては,インドと同じように,擬音的な文字で表す一種の唱歌(しようが)も用いられた。…
※「アラブ音楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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