改訂新版 世界大百科事典 「アランダ族」の意味・わかりやすい解説
アランダ族 (アランダぞく)
Aranda
オーストラリア,ノーザン・テリトリーの乾燥地帯(年間雨量50~100mm)に住むアボリジニーの一部族。アランタAranta(Arunta)とも呼ぶ。19世紀末から人類学者の報告を通して広く知られていた。五つの亜部族から成り,多少とも異なる慣習をそれぞれもっていた。採集狩猟生活を送り,その自然に関する知識と体験は今日も示唆に富んでいる。使用したのはブーメランと槍で,そのブーメランは投げた元の位置に戻らない種類のものである。親族,結婚,出自は父系原理と母系原理とを交錯させつつ,南部では四分組織,南部以外では八分組織に基づき,一夫多妻,交叉いとこ婚が行われた。トーテミズム,および夢幻時代といわれる創世紀の祖先と結びつく祭祀・宗教生活は精緻を極めた。20世紀後半以降の現代化は目覚ましく,その多くが都会に出たり,牧夫や肉体労働者となり,他方,各種の政府扶助金に依存する者も多く,かつての部族の統合と旧慣習はほぼ崩壊している。
執筆者:鈴木 二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報