翻訳|boomerang
オーストラリア先住民の間で使われた狩猟具。キジ、ノガモ、ハトなどの鳥や小動物をとらえるのに用いた。「く」の字形の平らな木の棒で、獲物に向かって投げ、命中しない場合には投げ手の近くに戻ってくることで知られている。飛行機の翼に似た断面をもち、最初、獲物に向かって直進し、やがて向きを変えて上昇したのち下降し、きりもみ状態で投げ手の付近に落ちることが実験的にも確かめられている。飛行中のブーメランは、こまのように中心を傾けながら回転して飛び続ける。そのとき生じる空気抵抗が羽根の形によって引き起こされる揚力に変化を与え、このような動きをするのだと考えられている。ブーメランには投げ手のところに戻らないものもあり、似た形態の飛び道具はエジプトのナイル川上流地域にもみられるので、きわめて古い文化の名残(なごり)を残す目印として民族学では早くから注目されてきた。ブーメランの起源は投げ棒のような用具だったと思われるが、鉄製の投げ小刀が使われている地方もある。古代エジプトでは武器として使われた。
[中村たかを]
『ロゲルギスト著『ブーメランはなぜ戻る』(『物理の散歩道』所収・1972・岩波書店)』
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…採集狩猟生活を送り,その自然に関する知識と体験は今日も示唆に富んでいる。使用したのはブーメランと槍で,そのブーメランは投げた元の位置に戻らない種類のものである。親族,結婚,出自は父系原理と母系原理とを交錯させつつ,南部では四分組織,南部以外では八分組織に基づき,一夫多妻,交叉いとこ婚が行われた。…
…リズム構造は,歌詞のアクセントにもとづいているが,概して複雑である。 歌の伴奏として使われる楽器とその用法は地域によって異なるが,リズム棒や狩猟用具でもある木製のブーメランのような単純な打楽器,そして手拍子や身体を打つ音などで踊りのリズムを強調する。堅い木に白蟻が孔をあけた木製の長いトランペット(またはドローン・パイプ)であるディジェリドゥーdidjeriduは,北部にのみ演奏され,専門的な訓練を要求される複雑な演奏技法により,明確なリズムをもった低音の連続音が出される。…
※「ブーメラン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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