改訂新版 世界大百科事典 「アリカメドゥ」の意味・わかりやすい解説
アリカメドゥ
Arikamedu
インド南東部タミル・ナードゥ州のポンディシェリー南郊の,ローマ帝国の交易の跡を示す前1世紀~後2世紀の遺跡。ベンガル湾に流入するアリヤーンクッパム河口の岸に遺構が露出し,ローマ製の遺物が採取され,1937,41年にはフランス人が簡単な発掘をしたが,45年にウィーラーが組織的に調査し,多大の成果を収めた。ローマ本土から到来したアレッツォArezzo土器(テラ・シギラタ)31片,ブドウ酒用のアンフォラ形土器,回転文土器rouletted wareが出土。アレッツォ土器には陶房名を押印したものがあり,それにより前1世紀初めから後1世紀中葉の年代が判明し,アンフォラ形土器の年代も東方貿易を確立したアウグストゥス帝(在位,前27-後14)の時代に求められた。その後,回転文土器はカルナータカ州のチャンドラバリでティベリウス帝(在位14-37)貨幣とともに出土した。アリカメドゥのウィーラーによる発掘は,インド南部に分布するローマ貨幣の由来やローマの東方貿易を説明するばかりでなく,従来年代が不明であった南インドの遺跡に,アリカメドゥで伴出したインド出来の土器を求めることによって確固たる年代を与え,北インド中心であったインド考古学の分野を南インドにまで推し進めて開拓した点に意義があり,また,その初期歴史時代の考古学的検討を促した功績は大きい。
執筆者:桑山 正進
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報