改訂新版 世界大百科事典 「アンズタケ」の意味・わかりやすい解説
アンズタケ (杏茸)
Cantharellus cibarius Fr.
主に針葉樹林内に生える担子菌類ヒダナシタケ目アンズタケ科のキノコ。全体に卵黄色,美しく風味すぐれた食用菌である。高さ3~8cm,かさは直径3~8cmほど,ほぼ円形で縁は浅く裂け,波をうつ。茎はほぼ円柱状,かさの中心から少しはずれてつくことが多い。かさの下側には放射状にならぶしわ状のひだがあり,その表面に胞子をつくる。胞子は楕円形,無色,表面なめらか。このキノコは少し乾いてくると,アンズに似たにおいがするので,長野県ではアンズタケとよんでいた。そのほかにコモタケ,サツキタケ,ウコンタケなどの名もあるという。日本全土,北半球温帯以北に広く分布する。ヨーロッパでは,フランス語のシャトレルchanterelleの名で広くよばれ,野生食用キノコとして珍重される。ゆでて乾燥させて,または缶詰にして売られる。
アンズタケのようにひだはしわ状で,表面がなめらかな胞子をもつキノコの一群をアンズタケ科とする。アンズタケ科の代表的な属にはアンズタケ属Cantharellusとクロラッパタケ属Craterellusがある。前者にはアンズタケのほかに,色が赤いベニウスタケC.cinnabarinus Schw.,後者にはクロラッパタケC.cornucopioides(Fr.)Pers.,トキイロラッパタケC.aureus B.et C.があり,すべて食用になる。なお従来アンズタケ属におかれたウスタケ,シロアンズタケなどはむしろホウキタケに近縁で,ラッパタケ科にうつされた。
執筆者:今関 六也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報