ホウキタケ(読み)ほうきたけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホウキタケ」の意味・わかりやすい解説

ホウキタケ
ほうきたけ / 箒茸
[学] Ramaria botrytis (Fr.) Ricken

担子菌類、マツタケ目ホウキタケ科の食用キノコネズミタケともいう。ホウキタケの形態は、いわゆるキノコ形ではなく、全体が樹枝状またはサンゴ状となる。径3~5センチメートルの太くて白い茎から、しだいに上のほうに枝を分け、先端部は無数の小枝が集合する。上から見る形はカリフラワー状で、枝先が淡紫ないし淡紅色で美しい。キノコは、高さ、径ともに15センチメートル余りである。胞子は全面にかすかに縦じわ状の筋模様を帯び、長楕円(ちょうだえん)形。胞子紋は黄土色広葉樹林の菌根菌であり、秋、地上に発生する。ネズミタケの名は、枝の先端をネズミの足に見立てたことに由来し、スペインでも同じような名前でよばれている。フランスでは「ニワトリの足」という意味の名をもっている。

[今関六也]

ホウキタケ科のキノコ

ホウキタケ科のキノコは、樹枝状のものから枝を分けない棒状のもの(単一型)まであり、その形は変化に富む。従来はヒダナシタケ目に分類されていたが、最近では、アンズタケ科とともにマツタケ目に置かれることが多い。これは、キノコ類の分類にはまだ定説がなく、学者によって意見が異なるためともいえる。ホウキタケ型の菌は世界で800種ほどが記録されている。日本での研究は著しく遅れているため、15属75種ほどにとどまるが、これは実存のなかば以下と推定される。日本でみられるホウキタケ科のキノコには次のようなものがある。(1)枝を分けない単一型 シラウオタケ、ナギナタタケムラサキナギナタタケシロソウメンタケスリコギタケなど。(2)樹枝型 ホウキタケ、コガネホウキタケ、キホウキタケ、ハナホウキタケ(毒)、ムラサキホウキタケなど。九州の別府(べっぷ)から阿蘇(あそ)にかけての笹(ささ)原に生えるササナバとよばれるキノコは、ホウキタケ型の菌で、美味な食菌として珍重されている。

 なお、日本でホウキタケ科として一括している菌は、欧米の専門学者によると三つ以上の科に分けられ、系統的にも異質のものとされる。このため、日本のホウキタケ科の分類には、やがて大きな変化がおこることも予想されている。

[今関六也]


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改訂新版 世界大百科事典 「ホウキタケ」の意味・わかりやすい解説

ホウキタケ
Ramaria botrytis (Fr.) Rick.

担子菌類ヒダナシタケ目ホウキタケ科の食用キノコ。ネズミタケともいう。共通の太い茎から幾回も枝を分け,上端は細かい枝がびっしりと並ぶ。高さも幅も10~15cm,枝先は淡紫紅色,その他は白い。味のよいすぐれた食用キノコとして広く親しまれる。ホウキタケ属Ramariaには種類が多く,ホウキタケのように無数に枝分けをするもの,枝が少ないもの,棒状で枝を分けないもの,1本ずつはえるもの,束になってはえるものなど形に変化は多く,大小,色などもさまざまあり,種類はきわめて多い。ホウキタケに形は似るが,紅色のハナホウキタケR.formosa(Fr.)Quél.と橙色のコガネホウキタケR.aurea(Fr.)Quél.などは,食べると下痢をする。スリコギタケClavariadelphus pistillaris(Fr.)Donkは高さ10~30cmで,太さ2~6cmのすりこぎ形の大型のキノコ。表面は淡黄褐色,肉は白いが傷つけば紫褐色になる。秋,広葉樹林の地上にはえる。分布は広く日本全土,北半球にみられ,食用になる。また棒状のものとしては純白のシロソウメンタケClavaria vermicularis Fr.,灰紫色のムラサキナギナタタケC.purpurea Fr.,黄色のナギナタタケClavulinopsis fusiformis(Fr.)Corner,紅色のベニナギナタタケC.miyabeana S.Itoなどがよく見られる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホウキタケ」の意味・わかりやすい解説

ホウキタケ(箒茸)
ホウキタケ
Ramaria botrytis

担子菌類ヒダナシタケ目ホウキタケ科。一名ネズミタケ。広葉樹林下の地上に生える。子実体は比較的大きく,高さ7~15cm,径6~20cmの塊となる。太い茎が次第に枝分れして,カリフラワーのような形になる。子実体頭部の色は白色,のちに淡黄色,帯赤黄色,紅色,紫色または淡紅紫色などになる。香気,味がよく食用となる。北海道,本州,九州に産し,ヨーロッパ,北アメリカ,中国などにも分布する。近似の種が多い。

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百科事典マイペディア 「ホウキタケ」の意味・わかりやすい解説

ホウキタケ

北半球の温帯に広く分布するホウキタケ科のキノコ。秋,山林内の地上に発生。全体に塊状肉質で裂けやすく,高さ幅とも10cm内外。円柱状の太い柄の先が分岐して無数の小枝となり,下部は白色,上部は淡紅色で表面に担子胞子をつける。かおりはないが風味や歯ざわりがよく,食用となる。近縁種が多く,うち全体紅色のハナホウキタケ,橙色のコガネホウキタケなどは下痢,嘔吐などをおこす。

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栄養・生化学辞典 「ホウキタケ」の解説

ホウキタケ

 [Ramaria botrytis].ラッパタケ目ホウキタケ科ホウキタケ属のキノコで,食用にする.

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世界大百科事典(旧版)内のホウキタケの言及

【キノコ(菌∥蕈∥茸)】より

…近世初期に刊行された《料理物語》には,以上のもののほかに,〈初茸〉〈いくち〉〈よしたけ〉〈木くらげ〉〈かうたけ〉〈鼠茸(ねずたけ)〉の名が見える。このうち,〈いくち〉はなん種類かの集合名ともいわれるが,次の〈よしたけ〉とともに実体不明,〈かうたけ〉はコウタケで,革茸,皮茸などと書き,〈鼠茸〉はホウキタケの別称である。【鈴木 晋一】。…

※「ホウキタケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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