アージービカ教(読み)アージービカきょう(英語表記)Ājīvika

改訂新版 世界大百科事典 「アージービカ教」の意味・わかりやすい解説

アージービカ教 (アージービカきょう)
Ājīvika

仏陀の時代に仏教ジャイナ教と並ぶほど有力だった裸形托鉢教団の宗教。六師外道の一人であるマッカリ・ゴーサーラを主導者とする。〈アージービカ〉という名称は,他教団からの貶称として用いられる時には,〈生活の糧を得るために修行する者〉の意となり,漢訳仏典では〈邪命外道〉と訳されている。典籍は現存せず,仏典やジャイナ教典の中に引用された断片から,教説や活動の一部が知られるのみである。人間の意志にもとづく行為を否定したゴーサーラの徹底的な宿命論は,仏陀によって厳しく批判された。厳格な修行を行う点で,アージービカ教徒はジャイナ教徒と共通点をもつが,時には放縦な行為に耽ることもあったようである。マウリヤ王朝時代までは相当有力であったが,その後次第にジャイナ教の中に吸収されていった。ただし南インドのタミル人の間では,少なくとも13世紀にいたるまで栄えた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アージービカ教」の意味・わかりやすい解説

アージービカ教
アージービカきょう
Ājīvika; Ājīvaka

インドの六師外道の一人ゴーサーラの属していた宗教。漢訳仏典では邪命外道と訳しているが,元来は,「生活法に関する規定を厳密に遵奉する者」の意味。ゴーサーラは,生き物を構成している要素として,霊魂,地,水,火,風,虚空,得,失,苦,楽,生,死の 12種を考えた。霊魂は物質のように考えられ,諸元素のみならず動物,植物などにも存在するとする。一切の生き物が輪廻に流されているのは無因無縁であり,それらが清浄となり解脱するのも無因無縁である。それらには自由意志というものがなく,運命,状況,本性に支配されて,無限に長い時間に愚者も賢者も流転し苦の終りにいたる。その間,修行によって解脱することは不可能である。彼は以上のような決定論を説き,バラモン教権威を否定した。アージービカ教はマウリヤ朝頃まではかなり有力であったが,その後ジャイナ教に吸収された。しかし,南インドのタミル地方ではアージービカ教が存続していたことが 1294年の碑文から推定される。

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世界大百科事典(旧版)内のアージービカ教の言及

【マッカリ・ゴーサーラ】より

…漢訳仏典では末伽梨瞿舎梨と音訳される。苦行主義のアージービカ教徒の論者で,ジャイナ教のマハービーラといっしょに修行したとされる。彼によれば,生けるものは霊魂,地,水,火,風,虚空,得,失,苦,楽,生,死という12の要素を実体としている。…

※「アージービカ教」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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