改訂新版 世界大百科事典 「アージービカ教」の意味・わかりやすい解説
アージービカ教 (アージービカきょう)
Ājīvika
仏陀の時代に仏教,ジャイナ教と並ぶほど有力だった裸形托鉢教団の宗教。六師外道の一人であるマッカリ・ゴーサーラを主導者とする。〈アージービカ〉という名称は,他教団からの貶称として用いられる時には,〈生活の糧を得るために修行する者〉の意となり,漢訳仏典では〈邪命外道〉と訳されている。典籍は現存せず,仏典やジャイナ教典の中に引用された断片から,教説や活動の一部が知られるのみである。人間の意志にもとづく行為を否定したゴーサーラの徹底的な宿命論は,仏陀によって厳しく批判された。厳格な修行を行う点で,アージービカ教徒はジャイナ教徒と共通点をもつが,時には放縦な行為に耽ることもあったようである。マウリヤ王朝時代までは相当有力であったが,その後次第にジャイナ教の中に吸収されていった。ただし南インドのタミル人の間では,少なくとも13世紀にいたるまで栄えた。
執筆者:丸井 浩
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報