ヘイムダル(その他表記)Heimdallr

改訂新版 世界大百科事典 「ヘイムダル」の意味・わかりやすい解説

ヘイムダル
Heimdallr

北欧神話の神。アース神族の見張役。地上から天上にかかる橋ビルロストのそばに,館ヒミンビョルグをもち,山の巨人から神々の橋を守る。鳥よりも睡眠を必要としないし,夜でも昼でも100マイル離れた所まで見え,草の生長する音や羊の毛の伸びる音まで聞き取れる。ギャラルホルンというラッパをもち,その音は世界の隅々まで聞こえる。原初に9人の巨人の娘から生まれたという。エッダ詩〈リーグの歌〉によると,ヘイムダルは,エッダ,アンマ,モージルの3人の女との間に3人の息子スレール,カルルヤルルを生むが,これが奴隷,自由農民,貴族の3階級の祖となったとされる。このため人間は彼の息子たちと呼ばれる。彼は神々のうち最も美しく,バン神族の神々のように未来がわかる。世界の終末ラグナレク)には世界樹イグドラシルの下に隠した黄金の角笛を高々と吹き,神々を目覚めさせ,戦いに呼び集める。そして自らはロキと戦って相打ちとなる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘイムダル」の意味・わかりやすい解説

ヘイムダル
へいむだる
Heimdallr

北欧神話の神。原初に9人の巨人の娘から生まれたとされ、アサ神族のなかの見張り役。地上から天上に架かる橋ビルロストのそばに館(やかた)ヒミンビョルグをもち、そこから全世界を眺めるが、彼のもつギャラルホルンというラッパの音は、世界の隅々まで聞こえた。『エッダ』の「リーグの歌」によると、ヘイムダルはエッダ、アンマ、モージルの3人の女との間にそれぞれ3人の息子スレール、カルル、ヤルルをもうけたが、これが奴隷、自由農民、貴族の三階級の祖となったという。世界の終末には、世界樹イグドラシルの下に隠していた黄金の角笛(つのぶえ)を高々と上げて吹き、アサ神族たちを戦いに呼び集め、自らはロキを相手に戦って相討ちとなる。

谷口幸男]

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百科事典マイペディア 「ヘイムダル」の意味・わかりやすい解説

ヘイムダル

北欧神話の神。原初に9人姉妹の巨人から生まれたという。アースガルズの見張り役で,虹の橋ビルロストのそばに住み,巨人が押し寄せる時はギャラルホルンを吹いて警告する。世界の終末(ラグナロク)では宿敵ロキを倒すが自分も死ぬ。彼はまた奴隷,自由農民,貴族の3階級の祖たる息子たちをもうけたとも。
→関連項目アース神族

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘイムダル」の意味・わかりやすい解説

ヘイムダル
Heimdall

北欧神話の神。「世界の光」と呼ばれ,神界でアサ神族の番人をしている。神界アスガルズへ行くための橋ビフレスト (虹) のたもとにいて,昼夜にかかわらず 100リーグ (約 500km) の先まで見える目と,草の伸びる音や羊の毛の伸びる音まで聞える耳をもち,鳥よりも短い睡眠しかとらない。「エッダ」によると,海の女神ランの娘である9人の姉妹の息子で,彼の力強さは,大地の力と氷の海といのししの血から生み出されたものだという。巨人や魔物に襲われて世界が滅びるとき,彼は神々に敵の接近を知らせるためのらっぱを吹き,神々とともに戦うが,ロキと相討ちになるという。

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世界大百科事典(旧版)内のヘイムダルの言及

【もてなし】より

…エッダ中の〈リーグの歌〉は北欧の3身分の起源を説明することを主題としつつ,旅人に対するもてなしのあり方を示唆している。アース神の一人ヘイムダルはリーグRígrと名のって3組の夫婦の家をつぎつぎに訪れ,3晩にわたり食事を供され,夜は夫婦のベッドの真ん中に寝る。いずれの場合も主婦は9ヵ月後に子どもを生み,その子どもたちがそれぞれ奴隷,農民(自由人),侯(ヤール)の祖となった。…

※「ヘイムダル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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