改訂新版 世界大百科事典 「イアンブリコス」の意味・わかりやすい解説
イアンブリコス
Iamblichos
生没年:250ころ-325ころ
シリアのカルキスに生まれた新プラトン派の哲学者。ヤンブリコスとも呼ぶ。ローマに遊学してポルフュリオスの門下に入り,後に故郷に帰ってシリア派を創立した。プロティノスの観想(テオリアtheōria)をさらに発展させ,人間の霊性開顕がそのまま神の業(テウルギアtheurgia)になるような方法を一種の典礼魔術として確立した。主著《エジプト人の密儀について》は,世界に無限に分割可能な位階秩序を導入し,存在者をより上のものとより下のものとの中間者,それゆえ媒介者としてとらえている。密儀とは魂がこの位階を一つずつ昇りつめ,ついには〈一者〉との合一に至る過程である。彼は新プラトン主義を魔術化したと非難されているが,ギリシアの哲学と東方神秘主義の実践形態とを結びつけた功績は大きい。彼にはほかに,《ピタゴラス的人生》《哲学の勧め》《数学入門》《ニコマコスの数論》《数論の神学的原理》などがあり,ルネサンス期に大きな影響を与えた。
執筆者:大沼 忠弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報