密儀(読み)ミツギ(英語表記)mystery

翻訳|mystery

デジタル大辞泉 「密儀」の意味・読み・例文・類語

みつ‐ぎ【密儀】

特別の資格を持つ者だけが参加できる、または特殊な資格を与えるために行う秘密の儀式。未開人イニシエーションキリスト教サクラメント、密教の加持・灌頂かんじょうの類。秘儀

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精選版 日本国語大辞典 「密儀」の意味・読み・例文・類語

みつ‐ぎ【密儀】

  1. 〘 名詞 〙 秘密の儀式。特別な資格を持つ者だけが参加できるか、またはそういう特別な資格を授けるために行なう内々の儀式。特に、密教の加持・灌頂のような類。
    1. [初出の実例]「青女向九条、密儀也、姫君帷沙汰進之、人々哥合哥等有談合事」(出典実隆公記‐文亀三年(1503)六月一三日)

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改訂新版 世界大百科事典 「密儀」の意味・わかりやすい解説

密儀 (みつぎ)
mystery

一般に,信徒以外には秘密とされている宗教儀礼をいう。ギリシア語ではミュステリオンmystērionで,〈(目や口を)閉ざす〉という意味のmyeinに由来する。特に古代ギリシア・ローマにおいては多くの宗教が,このような秘密の儀礼の執行を特徴としていた。その中で最も有名なものは,ギリシアのアッティカ地方の町エレウシスで行われていた密儀で,地名にちなんで〈エレウシス密儀〉とよばれている。密儀の主神はデメテルとその娘ペルセフォネコレー)であった。祭儀はボエドロミオンの月(太陽暦の9月なかばから10月)の13日から22日ないし23日にかけて行われたが,この月は刈入れと秋の種まきの中間期で,穀物の霊が死んで冥界に下降すると信じられた季節にあたる。デメテルへの《ホメロス風讃歌》によれば,デメテルは冥界の王ハデスに連れ去られた娘ペルセフォネを捜し出すため天界を去り,大地は実らず不作にあえぐことになる。ゼウスのとりなしでペルセフォネは1年の3分の1を冥界で,残りを地上で過ごすことになったので母神も怒りを解き,再び穀物を実らせ,エレウシスの人々に密儀を授けたという。神話の全体は,ギリシア的農耕祭儀の起源を語っているが,その背景にエジプトイシス=オシリス神話の影響があることも明らかである。

 この儀礼が,なぜ秘密とされたのかについてはさまざまな説があるが,一般に,未開社会の成人式(加入儀礼)などにみられるように,本来儀礼は秘密のうちに行われることによってその効果が発揮されると信じられてきたのであり,エレウシスのそれも例外ではない。想像されることは,ギリシアの先住民であるエレウシスの人々が,のちに侵入してきたギリシア人に対し,儀礼に参加することはおろか,儀礼を知らせることすら拒否し続けたことに起因するだろうということである。さらに都市国家(ポリス)が崩壊し,個人的な宗教への要求が極度に高まっていたヘレニズム・ローマ時代という特殊な社会的背景が,そのような傾向にいっそう拍車をかけていたともいえる。しかし,エレウシスがアテナイの支配するところとなると,密儀宗教としての禁制はしだいにゆるやかとなり,儀式は公開され全ギリシア人からローマ市民までを含めた自由参加が認められ,密儀性は希薄化していった。なお他の密儀宗教としては,オルフェウス教ミトラス教などが知られている。またキリスト教におけるサクラメント(秘跡)の原語もmystērionである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「密儀」の意味・わかりやすい解説

密儀
みつぎ
mystery

秘儀ともいう。特別の資格をもつ者だけに参加を許し,また新たに特別の資格を与えるために行う神秘的儀礼。ギリシア語の語源は「奥義」を意味する。元来は信仰を固めるために,宗教上の奥義を具体的な形 (制度) に表わしたものであるが,対外的には秘密性の保持,成員の選民意識の高揚,内部的には秩序と連帯の維持という重要な社会的機能をもつ。キリスト教の秘跡,真言密教における加持や灌頂 (かんじょう) の類,その他宗教的性格の強い秘密結社,きわめて伝統的生活をおくる社会の成年式,呪術などにおいて行われる非公開の儀礼がその例である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「密儀」の意味・わかりやすい解説

密儀
みつぎ

密儀宗教

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世界大百科事典(旧版)内の密儀の言及

【宗教劇】より

…劇の中では,ときに悪魔が跳梁跋扈(ちようりようばつこ)し,舞台の袖にはグロテスクに形象化された地獄が大きな口をあけているのであった。このような劇は,かなり世俗化したものまで含めて,演劇史で〈聖史劇〉あるいは〈神秘劇〉と呼ばれているが,これらはいずれも当時の呼び名であったフランス語〈ミステールmystère〉,英語〈ミステリー(・プレイ)mystery(play)〉などの訳語であり,もとはラテン語の〈ミュステリアmysteria〉(秘密の儀式,秘儀の意)に由来している。 フランスでは,14世紀後半から各地で〈受難劇団〉の設立が相次いでいたが,15世紀に入り,1452年には聖史劇(受難劇)の頂点というべき有名なグレバンArnoul Gréban(1410ころ‐70ころ)の《受難の聖史劇Mystère de la Passion》も出現した。…

※「密儀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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