イオンエンジン(読み)いおんえんじん

デジタル大辞泉 「イオンエンジン」の意味・読み・例文・類語

イオン‐エンジン(ion engine)

電気的なエネルギーを利用して推力を得るロケットエンジンの一。キセノン水銀などをイオン化し、強い電場により加速して噴出することで推進する。推力そのものは小さいが長時間の加速に向くため、人工衛星姿勢制御惑星探査機の主推進装置に利用される。計4基のイオンエンジンを搭載した日本の小惑星探査機はやぶさが、のべ4万時間に渡る運用を経て小惑星イトカワへの往復に成功し、その耐久性と信頼性の高さが実証された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イオンエンジン」の意味・わかりやすい解説

イオンエンジン
いおんえんじん

電気推進型のロケットエンジンの一種。通常のロケットが化学物質を燃焼させて推力を得るのに対し、電気を用いて推力を得るエンジンを電気推進型という。イオンエンジンは、キセノンなどのガスをイオン化して、さらに静電加速し、そのイオンガスを排出するときの反動で前進する。イオン推進、イオンロケット、イオンスラスタともいう。通常の化学燃焼型ロケットのように大きな推力は出せないが、継続的に長期間の加速が可能なので、惑星間飛行時の加速や軌道安定のための微調整などに利用される。

 原理は、キセノンなどの燃料材をイオン化(正電荷陽イオンと電子に分ける)し、陽イオンを静電加速する。この段階で機体本体は反動で前に推進力を受ける。加速された陽イオンは負電極を通り抜け、外へ排出されるが、このとき、先ほど分離した電子を付加して、ガス全体の電荷を中和する(機体全体が負電荷に帯電させないため)。

 2003年(平成15)打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」での運用により注目された。その後、「はやぶさ2」(2014年12月打上げ)や「ベピ・コロンボ」(2018年10月打上げ)などに搭載され、開発が進行中である。

[編集部 2022年10月20日]


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