はやぶさ(英語表記)MUSES-C

  • Hayabusa

知恵蔵の解説

宇宙科学研究所ISAS(宇宙航空研究開発機構JAXAの宇宙科学分野担当部門)が開発した宇宙探査機。小惑星の探査やイオンエンジンの実証を目的として2003年5月9日に打ち上げられ、05年には小惑星イトカワに到達・着陸を果たし、10年6月13日には最後のミッションとなる地球帰還に成功した。
はやぶさのミッションは市民の間でも大きな注目を集めていた。打ち上げに先立ち、03年5月には「星の王子様に会いに行きませんか」というキャンペーンが行われた。これは、小惑星着陸に際し、目標地点を定めるターゲットマーカーにはやぶさを支援する人々の名前を刻むというもの。キャンペーンには世界各国から80万人を超える応募があり、名前が刻まれたマーカーは無事イトカワに届けられた。
はやぶさは、将来の本格的な「サンプルリターン・ミッション」を達成するために必要な技術を開発し、それが使えることを実証するための探査機。サンプルリターンとは地球以外の天体から採取した試料を持ち帰ることをいう。「はやぶさ」ミッションの主な目的は、このために必要なイオンエンジン、自律誘導航法、小惑星のサンプル採取、地球スイングバイ、再突入カプセルについての技術を実証することにあった。はやぶさによるイトカワからのサンプルリターンは、月以外の天体の固体表面からのものとしては人類初となる。太陽系の初期のころの物質を知る上で、小惑星は惑星誕生期の記録を比較的よくとどめていると考えられ、はやぶさの成果が期待されていた。
イオンエンジンは、イオン(電気を帯びた原子団)の加速を利用して推力を得るエンジンで、燃料の重量に比べて大きな推力を得られることから、旧来のヒドラジン系の燃料に代わって人工衛星や探査機に採用されてきている。はやぶさが搭載するイオンエンジンは、マイクロ波放電を利用する方式としては初めて実用化されたものである。実際の運用では様々なトラブルに遭遇したが、トラブル発生とその対応策を探ること自体が実験目的でもあり、巧みな操作で多くの問題を解決してきたことが高く評価されている。
はやぶさの設計は、イトカワで採集した資料を入れたカプセルのみを回収し、本体の探査機はさらに運行を続けることも可能なものだったが、帰還時の安定性に問題があったため、大気圏外でカプセルを分離後、本体も再突入した。カプセルは成層圏でパラシュートを開き、オーストラリア南部のウーメラ区域に着陸し無事回収された。
数々の苦難を乗り越え、満身創痍(そうい)になりながらも長期にわたる航行を続け、最後には本体は燃え尽きながらもミッションを果たしたことから、「あきらめなければ、いつか必ず願いはかなう」ことの表象として人々の共感を呼んだ。

(金谷俊秀  ライター / 2010年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

機体は箱形で長さ2メートル、重さ約500キロ。イオンエンジンやカメラなどが積まれた。2005年秋、地球と火星軌道を横切るように公転する全長500メートルほどの小惑星イトカワに到着。表面がでこぼこした様子などを観測した。着陸時に舞い上がったを回収した可能性があるカプセルは中華鍋のような形で直径40センチ、重さ17キロ。ハヤブサのように瞬時獲物をとらえるイメージから名付けられた。

(2010-06-14 朝日新聞 朝刊 1社会)

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百科事典マイペディアの解説

日本の小惑星探査機。2005年5月,宇宙航空研究開発機構(JAXA,打上げ時は文部科学省宇宙科学研究所)が打ち上げた。探査機の重さは燃料を含め510キログラム。イオンエンジンによる微小な加速を蓄積する航法で2005年9月に小惑星イトカワに到着,種々の観測を行い,データを地球に送信,同年11月に着陸及び離陸に成功した。離陸後,地球への帰還軌道への進入,軌道制御には成功したが,着陸時にいくつかの機能が故障し予定の2007年6月に地球へ帰還することが困難になった。着陸時におけるイトカワの表面物資採取装置が稼働したかどうかは不明だった。その後,燃料漏れ,探査機の姿勢喪失,太陽電池発生電力の低下,リチウムイオン電池の放電など,さまざまな困難が生じたが,それらを克服して,2010年6月13日に地球に帰還した。電波による指令が遅延する超遠距離の自動航法システムの作動が成功し,長期にわたる複雑かつ柔軟な運航が可能であることを証明した。帰還カプセルに入っていた微粒子はイトカワのものと判明,小惑星粒子の採集は世界初である。2011年には,2014年に向けて〈はやぶさ2〉打ち上げのプロジェクトも発表された。2014年12月,種子島宇宙センターから打ち上げられた〈はやぶさ2〉は目標の小惑星1999 JU3を探査した後,2020年頃の地球帰還を目指す。→宇宙航空研究開発機構
→関連項目惑星探査機

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

宇宙航空研究開発機構 JAXAの宇宙科学研究所 ISASが開発した小惑星探査機。打ち上げ前の名称は MUSES-C。2003年5月9日に鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられ,2005年11月に小惑星イトカワに到達,2010年6月13日にオーストラリアのウーメラに着陸して地球に帰還,月以外の天体に着陸して帰還した世界初の探査機となった。技術的困難に遭遇しながらも,イトカワについて多くの貴重な科学的データを持ち帰った。はやぶさは惑星間移行軌道へ投入されたのち,4個の小型イオンエンジンによって推進された。可視分光撮像カメラ AMICA,赤外線・X線分光計(→赤外線分光計),レーザー高度計 LIDARなどの装置を搭載。イトカワに接近しながら,その自転軸を明らかにするため,可視分光撮像カメラによって画像を撮影した。2005年11月4日,初めての着陸リハーサルを行なったが,データ信号不良のため中止された。同月 12日の 2度目のリハーサルでは,イトカワの表面から 55m以内にまで接近したが,そこから上昇を始めたのち小型探査ロボット「ミネルバ」が誤って分離され,宇宙へと放出されてしまった。同月 19,25日の 2回,イトカワの表面への着陸とそこからの離陸に成功。地球帰還の際に,はやぶさは小惑星の微粒子を入れた 1個のカプセルを地上に投下した。カプセルからはイトカワの 0.01mmに満たない 1500粒ほどの微粒子が見つかり,分析の結果,最も一般的な隕石である普通コンドライトはイトカワのような S型小惑星に由来すること,またイトカワは太陽風宇宙線の影響を受けてゆっくりと風化していることが明らかとなった。2014年12月3日,C型小惑星リュウグウの探査およびサンプル採取を目的に,後継機『はやぶさ2』が鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。

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