原理的にはロケット推進薬(推進剤ともいう)を高速で噴出し、その反作用で推力を得る装置であり、ジェットエンジンと原理は同じである。推進薬は、通常、燃料と酸化剤とからなり、大気圏外で推力を得ることができる。一般に推進力は噴出された推進薬の流量に比例し、その比例係数を比推力といい、秒単位で表される。
[河崎俊夫]
ロケットエンジンは、利用するエネルギーと、そのエネルギーをどのように運動エネルギーに変換するかで分類される。現在、実用化されているのは化学ロケットである。その他ではイオンあるいはプラズマ・ロケットがもっとも実用化に近い。しかしそれらは推進薬単位流量当りの推力は大きいが、装置の質量が大きくなるために、地上からの打上げには使えず、人工衛星になってからの軌道修正や姿勢制御などに供される。
化学ロケットは、推進薬が固体か液体かによって分類される。
[河崎俊夫]
チャンバーとよばれる円筒形の筒の中に推進薬を充填(じゅうてん)し、その先端に着火のための点火器が、後端にはチャンバー内で発生したガスを効率よく高速で噴出するためのノズルがついている。内圧は、発生するガス量とノズルより噴出するガス量とのバランスで決まる。大きな速度を得るためには、推進薬質量のロケットエンジン全体の質量に対する割合、すなわち質量比をできるだけ大きくする必要から、極力構造質量を減らす必要がある。そのため、燃焼中のチャンバー内圧力が一定になるように固体推進薬の燃焼面積を一定にするような設計とし、筒の材料に高張力鋼、チタン合金あるいは複合材料をフィラメント・ワインデングしたものなどが用いられる。
[河崎俊夫]
燃料と酸化剤を燃焼させ、それを高速噴流として後方に噴出させて推力を発生させる推力室と、タンクから推力室に燃料、酸化剤を送り込む供給系からなる。供給系には二つの方式がある。まず、ガス押し方式は、加圧ガスタンクからのガスを燃料、酸化剤の二つのタンクに送り、その圧力によって推進薬を推力室に送り込む方式で、タンクはその押し圧に耐えるだけの強度が要求されるので、頑丈に製作する必要があり、質量比を高めることはむずかしい。もう一つはタービンポンプ方式で、燃料、酸化剤はタービン駆動のポンプで噴射器を通して噴霧状になって推力室に送り込まれ、燃焼して高温ガスとなり、ノズルから高速で噴出する。この高速流の反作用として推力が発生する。タービンポンプ方式は、推力室における噴射器や壁面を冷却するために、壁面を細いパイプで構成し、パイプ内に燃料を冷却剤として流すような複雑な構造となっているが、タンクを高圧で加圧する必要がないので、質量比の大きなエンジンをつくることができる。
タービンポンプ方式は大型ロケットに有利で、アメリカのスペースシャトルをはじめ、日本のH-ⅠロケットおよびH-Ⅱロケット、H-ⅡAロケットの液体ロケットエンジンはすべてこの方式を用いている。一方、ガス押し方式は構造が簡単で、比較的小型のエンジンに用いられる(例、N-Ⅱロケットの第二段エンジン)。
[河崎俊夫]
高速性を最大目的に設計されているロケットエンジンの制御性は貧弱である。固体ロケットは一度着火すれば燃焼終了まで制御することは困難である。今日ではある程度の推力制御が可能になってきているが、その点、液体ロケットは推進薬の供給を抑制あるいは停止することによって必要速度を得るように制御できる。アポロの月着陸用エンジンやスペースシャトルの主エンジンは推力の大きさを変えることができる。
ロケットエンジンはまた進行方向の制御を行うことが多い。進行方向の制御は、液体ロケットではジンバル方式、固体ロケットでは二次流体噴射方式が用いられている。
[河崎俊夫]
『日本航空宇宙学会編『航空宇宙工学便覧』(1992・丸善)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ロケット推進機関あるいはこれを備えた飛翔(ひしよう)体の呼称。ロケット推進機関はロケットエンジンあるいはロケットモーターとも呼ばれる。ロケットは自身が携行する物質を加速放出し,その反動で推進力を得ることを特徴としており,このための携行物質を推進材という。…
※「ロケットエンジン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
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