はやぶさ2(読み)ハヤブサツー(その他表記)Hayabusa2

デジタル大辞泉 「はやぶさ2」の意味・読み・例文・類語

はやぶさ‐ツー【はやぶさ2】

JAXAジャクサ(宇宙航空研究開発機構)による小惑星探査機、および探査計画の名称はやぶさの後継機による地球近傍小惑星リュウグウへの着陸サンプル採取を目標とし、平成26年(2014)12月に打ち上げられた。平成31年(2019)2月、探査機本体の1回目の着地に成功。4月に表面へ金属塊を撃ち込み、世界で初めて人工クレーター形成。7月に再び着地を実施し、噴出した地下物質を採取した。令和2年(2020)12月に帰還カプセル回収と5グラム以上のサンプルリターンに成功。その後、はやぶさ2本体は別の小惑星を探査する拡張ミッションに移行した。

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共同通信ニュース用語解説 「はやぶさ2」の解説

はやぶさ2

世界で初めて小惑星から岩石を採取して地球に戻った探査機「はやぶさ」の後継機。2014年12月に鹿児島県種子島宇宙センターから打ち上げられた。大きさは縦1・25メートル、横1メートル、奥行き1・6メートル。18年6月に小惑星りゅうぐうに到着し、19年2月と7月に着陸して岩石の採取に挑んだ。20年12月6日に収納カプセルをオーストラリア南部の砂漠に落下させ、回収にも成功した。往復の総飛行距離は52億4千万キロ。はやぶさ2は地球を通過し、別の小惑星の調査に旅立った。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「はやぶさ2」の意味・わかりやすい解説

はやぶさ2
はやぶさつー

宇宙航空研究開発機構(JAXA)により、2014年(平成26)12月3日にH-ⅡAロケットで打ち上げられた小惑星探査機。2010年に地球に帰還したはやぶさの後継機である。地球近傍小惑星リュウグウの探査とサンプルリターンを目的とした。はやぶさの目的小惑星イトカワは岩石系小惑星(S型小惑星)であったが、リュウグウは炭素系の物質を主成分とするC型小惑星であり、有機物の探索も考えられた。はやぶさ2の質量は600キログラムで、大きさは1.0メートル×1.6メートル×1.4メートル。本体の基本構造は、はやぶさとほぼ同じであるが、改良されて新たな搭載機器が加えられた。そのひとつである「衝突装置」は、小惑星に人工的にクレーターをつくり、表面を露出させて熱などの影響の少ないサンプルを採取するための機器である。

 2018年6月27日、リュウグウに到着。2018年9月21日に小型着陸機の「ミネルバ2」を投下して、その着陸後の写真より投下実験の成功を確認した。2018年10月3日にはドイツとフランスが開発した小型着陸機「マスコット」を投下して、着陸の成功を確認した。2019年2月22日に最初のタッチダウンを成功させ、砂などのサンプルを採取した。2019年4月5日、衝突装置により、リュウグウに直径10メートルのクレーターを開けることに成功した。2019年(令和1)7月11日にクレーター内のサンプルを採取するための2回目のタッチダウンを行い、成功した。

 2020年12月6日、はやぶさ2は地球に接近、サンプルが入ったカプセルを分離後、次の目的である「1998KY26」へ向けて飛行中である(2031年7月到着予定)。

 回収されたサンプルは、世界各国の研究者により分析中である。2022年6月6日に十数種のアミノ酸、同年9月23日には塩や有機物が含まれる「炭酸水」が検出された。

[編集部 2023年8月18日]


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知恵蔵 「はやぶさ2」の解説

はやぶさ2

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発・運用する小惑星探査を目的とする科学衛星。世界で初めて小惑星からサンプルを持ち帰ることに成功した「はやぶさ」に続く2機目の小惑星探査機となる。2019年2月に小惑星リュウグウ(Ryugu)へ1回目のタッチダウン(接地)に成功。以降、様々な運用を行い、20年末に地球に帰還する予定。小惑星を探査しサンプルを持ち帰るミッションを通して、太陽系天体への往復探査技術を確実なものにすると共に、太陽系誕生や生命誕生の秘密に更に近づくことができると期待されている。
数々の困難を乗り越えて2010年に世界初の地球帰還を果たした「はやぶさ」は工学試験探査を主とする実験機だった。「はやぶさ2」は、その後継として理学探査に重きを置く実用機として開発された。このため、「はやぶさ」の技術を受け継ぐと共に、その経験を生かした数々の改良が行われた。「はやぶさ2」は、種子島宇宙センターからH-ⅡAロケットで14年12月に打ち上げられ、地球の重力を利用するスイングバイを経て、18年にリュウグウ付近に到着。「はやぶさ」で果たせなかったローバー(探査車)や、ドイツ、フランスが共同開発した国際協力機器である小型着陸機の投下、運用に成功した。19年2月のタッチダウンでは、同じく懸案となっていたプロジェクタイル(弾丸)発射を含むタッチダウンを実施し、十分な量のサンプルが得られたと見られる。同年4月以降には、衝突装置を使って小惑星に人工クレーターをつくる世界初の試みや、可能ならばその近傍に再着陸して小惑星内部のサンプルを採取する運用を行い、同年末ごろに帰途に就く予定。
JAXAは、「はやぶさ2」のミッションの意義は三つあるとしている。一つ目は科学的意義で、「我々はどこから来たのか」という疑問を解決するためのもの。「はやぶさ」が探査した小惑星イトカワ(Itokawa)は、その成分が主に石質であるS型小惑星に分類される。これに対して、「はやぶさ2」の目標天体であるリュウグウは炭素を主成分とするC型小惑星で、太陽系が生まれた頃の水や有機物が残されていると考えられている。このため、惑星の起源だけでなく、地球の水や生命誕生の秘密に迫る上で重要な探査となる。二つ目は技術的意義で、「技術で世界をリードする」ために、「はやぶさ」で培った日本独自の深宇宙探査技術の継承と発展を目指す。三つ目は探査としての意義で、「フロンティアへの挑戦」により、科学技術のイノベーションや産業・社会への貢献を挙げている。

(金谷俊秀 ライター/2019年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「はやぶさ2」の意味・わかりやすい解説

はやぶさ2
Hayabusa2

宇宙航空研究開発機構 JAXAが開発した小惑星探査機。はやぶさの後継機として開発され,小惑星リュウグウの探査とサンプルリターンを行なう目的で,2014年12月3日に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。C型小惑星のリュウグウは,はやぶさが探査した S型小惑星イトカワよりも始原的であると考えられており,より始原的な小惑星を探査し,その試料を分析することで,太陽系の起源や進化,生命の原材料物質を解明することを目指す。はやぶさ2は,光学航法カメラ ONC,中間赤外カメラ TIR,近赤外分光計 NIRS3(→赤外線分光計),レーザー高度計 LIDARなどの観測装置や衝突装置 SCI,小型ローバ MINERVA-II,小型着陸機 MASCOTなどを搭載する。2018年6月,リュウグウに到達。同 2018年9月には MINERVA-II 1の分離に成功,2機のローバがリュウグウに着陸した。MINERVA-IIは世界で初めて小惑星の表面に着陸し,移動,撮影を行なった。2019年2月,はやぶさ2本体がリュウグウへのタッチダウン(接地)に成功し,リュウグウ表面の試料採取を実施した。同 2019年4月には,地中の試料を採取するため SCIを分離,リュウグウに金属弾をぶつけ,直径 10mにわたる人工クレータの作製に成功した。小惑星にクレータを作製するのは世界初となった。

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知恵蔵mini 「はやぶさ2」の解説

はやぶさ2

JAXA(宇宙航空研究開発機構)の小惑星探査機。2010年6月に地球への帰還を果たした小惑星探査機「はやぶさ」(MUSES-C)の後継機で、太陽系の起源・進化と生命の原材料物質を解明するため、C型小惑星「1999 JU3」を目指す。本体の基本構造は「はやぶさ」とほぼ同等だが、「はやぶさ」で実証した技術を継承し発展させることで、より推進力や耐久性のあるものに仕上げられている。新技術としては、小惑星に激突させ、小惑星内部のサンプルを得るためのインパクタ(衝突装置)が搭載されている。14年12月3日、「はやぶさ2」はH-IIAロケット26号機に搭載され、種子島宇宙センターから打ち上げられた。C型小惑星に到着するのは18年半ばで、1年半ほど小惑星に滞在し、20年末頃に地球に帰還する予定となっている。

(2014-12-4)

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