改訂新版 世界大百科事典 「イネミズゾウムシ」の意味・わかりやすい解説
イネミズゾウムシ
Lissorhoptrus oryzophilus
甲虫目ゾウムシ科の昆虫。北アメリカ原産で,日本では1976年に愛知県の水田で発見されたのが最初である。この属は南・北アメリカに分布し,日本へ侵入した種を含め約5種がイネを加害する。イネミズゾウムシはアメリカではrice water weevilと呼ばれ,イネの害虫として恐れられている。幼虫は根を加害し,root maggotと呼ばれる。日本へは乾草についてもちこまれたと考えられている。成虫の背面は細かい灰褐色の鱗毛に覆われ,中央部は暗色を帯びる。体長約3mm。成虫は4月下旬ごろから出現し,田植後のイネの葉を葉脈に沿って条状に食べ,イネクビホソハムシ(イネドロオイムシ)に似た食痕を残す。水中や水面を泳いで移動し,水中の葉鞘(ようしよう)に白色の卵を1個ずつ産みつける。幼虫は水中を下りて根に達するが,腹部の背面に対をなして並ぶとげ状の気門によって植物の組織から酸素をとり入れることができる。泥を固めて繭をつくり蛹化(ようか)する。卵から成虫までの期間は約40日。新成虫は7~8月に出現するが,主として水田周辺のイヌビエ,メヒシバ,チガヤなどを食べる。成虫で越冬する。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報