日本大百科全書(ニッポニカ) 「イリイン」の意味・わかりやすい解説
イリイン
いりいん
М. Ильин/M. Il'in
(1896―1953)
ソ連の児童文学者。本名はイリヤ・ヤコウレビチ・マルシャークИлья Яковлевич Маршак/Il'ya yakovlevich Marshakで、詩人サムイル・ヤコウレビチ・マルシャークの実弟。1895年12月29日(新暦では1896年1月10日)バフムト(現在のアルチョーモフスク)に生まれる。1925年レニングラード工科大学卒業。同大学在学中の24年ごろから児童雑誌に科学読み物を寄稿し始めた。第一次五か年計画に関する『偉大な計画の話』(1930)が大成功を収め、ゴーリキーに高く評価された。こみいった科学現象を平易な筆で解説し、労働の価値や社会主義建設を詩的な表現でうたい上げる天分によって、世界の児童文学に新境地を開いた。妻のセガール夫人との共著『人間はどうして巨人になったか』(1946/邦訳『人間の歴史』『人間のあゆみ』)が代表作で、『山々と人間』(1935)、『原子への旅』(1948)など多くの著作が諸外国に紹介されている。53年11月15日没。
[中本信幸]
『八住利雄他訳『イリン選集』全10巻(1953~55・岩崎書店)』▽『袋一平訳『人間の歴史』(1959・岩波書店)』▽『村川隆訳『人間の歴史 先史編・古代編』(角川文庫)』▽『樹下節訳『人間のあゆみ』全3巻(1974・理論社)』