インディオの音楽(読み)インディオのおんがく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「インディオの音楽」の意味・わかりやすい解説

インディオの音楽
インディオのおんがく

中南米の先住民族インディオは北アメリカの先住民族インディアンとともに一つの音楽文化圏をつくっているが,楽器や演奏形態のうえで独自の特徴をもそなえている。北米で楽器の種類が限られているのに比べると,気候や自然環境がより多様な中南米ではそれなりに発音機構に工夫の跡がみられる。簡単な造りの楽器としては,熱帯産の大きなさや豆の乾燥したものをガラガラ (ラットル) として振奏するもの,動物の骨が管状になっているものを吹奏するもの,木片を打奏するものなどがある。笛の類にはさまざまな工夫がみられ,管を1本だけ吹くもの,数本~10本ほど筏状に束ねたパンパイプ (パンの笛) ,1本ではあっても指穴をふやしたり歌口の造りを変えたりしたものがある。北米の場合と同様に音楽と舞踊が密着していることが多いが,北米のような圧倒的な数の集団による演奏よりもむしろ少人数掛合やアンサンブル形式のほうがよく見受けられる。しかし葬儀にまつわる集会などでは,建物の中で男声が複雑な旋律型を多数で歌い,外で女声が低音持続音を長々と響かせるといったような集団演奏もときおり行われる。また,動物が象徴的に神聖化されて題材として歌い込まれ,歌詞からは宗教的な自然観,世界観を凝縮された形で聞き取ることができる。かつて,メキシコグアテマラペルーボリビアなどのすでに絶滅した高文明都市社会では,中小の規模の器楽アンサンブルや合唱,それらを利用した舞踊や演劇が栄えていた痕跡が残されている。宗教儀式では司祭,楽器担当者,応唱歌を歌う合唱隊が役割を果していた。一方,白人との混血であるメスティーソたちは,ヨーロッパ (おもにスペイン) 的リズム,音律,音階,楽器 (ギターなどの撥弦リュート) を巧みに取入れた民俗音楽の伝統を築き上げた。そのような伝統のなかのいくつかがポピュラー音楽に応用されて,いわゆるラテン音楽として広く世界に知られるようになった。

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