片方が閉じられた種々の長さの管を束ねるか,または筏(いかだ)状につなげて縦にもち,切口を吹いて奏する管楽器の一つ。ほぼ世界全域に分布しており,竹,葦などの自然材が育たない地域では,木,陶器,石などで一体に作られるほか,金属やコンドルの羽軸なども使用される。発生は石器時代にさかのぼるとされている。ギリシア神話の半獣神パンの笛とする説があることから,一般に,この名称が用いられている。管長によって音高が定められ,指孔を用いないために比較的音程が正確であることと,筏形の場合は各音が組織的に配列されていることなどから,世界各地の音楽の比較研究に重要な役割を果たしている。中国古代に定められた音組織十二律を示す律管はその代表例といえる。現在盛んに使用されている地域としては,ルーマニア,ボリビアなどが知られているが,南太平洋ソロモン諸島では,この楽器が社会的にも主要な役割を果たしている。島々の重要な祭りにあたって,酋長の求めに応じて作られた歌はパンパイプの音楽として残されるほか,酋長のパンパイプの音高は他に新しく作られるものの基準にされる。なお,祭りごとにパンパイプは新しく作られ,祭りの後には壊される。マライタ島には7種類のパンパイプを用いる合奏音楽があり,最も長いものは160cmにも及ぶほか,おそらく世界で唯一といわれている,水平に構えて奏されるパンパイプもある。
執筆者:郡司 すみ
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…孤立した部族社会のインディオたちは,自然環境を活用して,たとえば乾燥した大きなさや豆をガラガラとして振奏して踊ったり,管状の骨をトランペット式に吹奏したり,木片に紐をつけて〈うなり木(ブル・ロアラー)〉として空中高く振りまわすなどユニークである。笛の類では,1本だけの管を吹くもの,3~10本ほどの管を束ねたパンパイプなどが混交音楽文化の要素としてはたらいている。【山口 修】
【アメリカ合衆国とインディアン】
19世紀のアメリカ史家フランシス・パークマンは,白人とインディアンの接触の仕方の特性について次のように要約した。…
…たいていは管長に変化を与えるもので,(1)(2)の多くは管壁に小孔があり,指で直接あるいはキー(鍵(けん))の助けを借りて開閉する。パンパイプや笙のように,単音の管を束ねて1セットとした楽器もある。(3)は弁と迂回管の組合せによるものか,スライド式に管がのびるものがほとんどである。…
… 以上の諸楽器は,たいてい器壁に数個の指孔があり,それを利用してさまざまな音高をつくり,音階の吹奏を可能にしているが,無指孔で単音の笛を何本も並べてセットした楽器もある。パンパイプ(正倉院の甘竹簫,中国の排簫,パン・フルートなどの通称で親しまれているルーマニアのナイ等々を含む)がそれであり,機械化・大規模化したのがオルガンである。【関根 裕】
[原理]
笛の音の発生の筋道には未解明の点も多いが,ほぼ次のように言える。…
※「パンパイプ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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