アメリカの思想家ソローの主著で1854年刊。《森の生活》ともいう。1845年7月4日から2年2ヵ月,マサチューセッツ州コンコード郊外の森にあるウォールデン池のほとりに小屋を建て,ひとりぐらしをしたときの記録を縦糸に,そのときどきの観察や思索を横糸として織り上げた作品。生活を営む彼の基本姿勢は〈厳しい節約,つまりスパルタ人も及ばぬ厳しい生活の単純化と目的の高揚〉だと要約できる。ソローの考えでは,人間は手段の獲得に狂奔してかんじんの目的を忘れている。そこで世間から一歩退いて一人となり,自分の思いのままに生きてみて,本当に生活だと言えるものだけに〈単純化〉したいと願ったのである。自然のさまざまな生態が硬質的な散文で活写されていることも大きな魅力である。〈野蛮で荒涼とふつう呼ばれている場面にさえ,なぜかわたしとの血縁を感じる〉というような自然に寄せる全体的な関心は,この作品をラディカルな現代文明批判にもしている。
執筆者:酒本 雅之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…40年代にはいってトランセンデンタリストたちの機関誌《ダイアル》などにエッセーを発表し始める。45年夏ウォールデン池のほとりに自分で小屋を建て,以後2年2ヵ月に及ぶひとりぐらしを始める。その動機をソロー自身が主著《ウォールデン》(1854)の中で,〈慎重に生き生活の本質的な事実だけに直面したかったから〉と説明している。…
※「ウォールデン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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