改訂新版 世界大百科事典 「ウチワヤシ」の意味・わかりやすい解説
ウチワヤシ
palmyra palm
Borassus flabellifer L.
通常,栽培される大型のヤシ科植物で,高さ30mに達する。オウギヤシ,パルミラヤシの別名もある。掌状葉は扇形で径1~1.5m,堅い革質で光沢がある。葉柄は長さ2mくらいで,ふちにとげ状の歯牙がある。花は雌雄異株。果実は球形の核果で直径15~70cm,黒褐色に熟する。熱帯アフリカの原産で南アジア,とくにインド,スリランカ,マレーシアなどのやや乾燥した地帯に古くから栽培されており,ところによっては野生化している。用途の広い点ではココヤシに次いでいる。幹は垂木(たるき),家具などの用材となり,葉は屋根をふくほか,敷物,籠,帽子などを編む。また緑肥にしたり,焼いて石灰と塩をとったり,昔はタリポットヤシ(別名コウリバヤシ)の葉とともに文書の記録を行った。とくにこの葉に経文を書いたものを貝葉経(ばいようきよう)と呼ぶ。葉柄,茎の内部,外果皮などからも繊維がとれ,花軸の液汁から砂糖や酒,さらに酢をつくる。また果実と胚乳や若芽なども食用となる。
執筆者:初島 住彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報