改訂新版 世界大百科事典 「エウブロス」の意味・わかりやすい解説
エウブロス
Euboulos
生没年:前405ころ-前335ころ
アテナイの政治家で,とくに財政専門家として知られる。前350年代後半,行政剰余金からなる祭祀金(テオリカ)を主管する〈祭祀財務委員会〉を通して国家財政の全体を掌握し,重要でない軍事行動への支出を抑え,一方では一連の経済振興策を導入して歳入増加を図り,同盟市戦争(前357-前355)などで破綻に瀕した国家財政を再建した。彼の経済政策については,クセノフォンの《歳入論》の提言との関連が考えられる。外交政策では戦争を避け,平和主義をとった。前348年全ギリシア人の統合によって,マケドニアのフィリッポス2世のギリシアへの干渉を排除しようと試みたが失敗し,前346年の〈フィロクラテスの平和〉(フィロクラテス)以降は,マケドニアとの平和維持路線を代表した。このためデモステネスらの主戦派と対立することになったが,前342年までに主戦派がアテナイの政策を完全に支配し,彼の影響力は失われた。
執筆者:篠崎 三男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報