日本大百科全書(ニッポニカ) 「エバハート」の意味・わかりやすい解説
エバハート
えばはーと
Richard Eberhart
(1904―2005)
アメリカの詩人。ミネソタ州オースティンに生まれる。ミネソタ大学、ダートマス大学を経て、のちイギリスのケンブリッジ大学で学ぶ。T・S・エリオット、エズラ・パウンドが主導した1910年代、20年代の詩の革新運動がやや沈静したあとの、穏健な詩風の世代を代表する詩人の一人。自然の営為に対する緻密(ちみつ)な観照が特徴で、抒情(じょじょう)詩人ともいわれるが、しばしばそこから人生や歴史への省察を引き出してくる。汎神論(はんしんろん)的宗教観もうかがわれ19世紀の超絶主義者と一脈通ずるものがあった。
詩集に『地球の美』(1930)、『精神を読む』(1936)、『歌と観念』(1940)などをはじめ多数ある。『精神を読む』の一編「グラウンドホッグ」は、1匹の小動物の死の観察から人間の歴史の栄枯にまで思いを馳(は)せる彼の代表的小品としてとくによく引用される。後年はボリンゲン賞(1962)、ピュリッツァー賞(1966)、全米図書賞(1977)など多くの栄誉を授けられ、アメリカを代表する国民的詩人とみなされた。
[沢崎順之助]