改訂新版 世界大百科事典 「エリデス」の意味・わかりやすい解説
エリデス
Aerides
花を観賞するために栽植されるラン科エリデス属の着生植物。エリデス属は熱帯アジアを中心に約60種が分布する。多くは直立する高さ15~30cmの茎をもち,多肉質の広線形,ときには円柱状の茎を2列に互生し,節より気根を生ずる。花序は葉腋(ようえき)から出て,横もしくは垂下し,総状に多いものでは20輪以上の花をつける。花色は紅,ピンク,白で,先端に濃色の斑点の入るものもある。多くは芳香がある。濃緑色の葉と総状に多数つく花が美しく,多くの種が温室で栽培されるが,それらのうちでもっとも有名なものは,エリデス・オドラトゥムA.odoratum Lour.で,名のように芳香があり,インドシナ半島原産である。交配による品種改良も行われており,また他属との間に属間交配が多い。バンダ属との間にエリドバンダAeridovandaが,フウラン属との間にエリドフィネティアAeridofinetiaが,ファレノプシス属との間にエリドプシスAeridopsisなどが育成されている。越冬には10℃以上の加温温室が必要で,多湿を好むため乾燥期には霧水が必要となる。春から秋の生長期は戸外の寒冷紗下におき,肥培する。繁殖は株分けで行い,適期は初夏。なお,日本のナゴランは従来エリデス属に分類されたが,最近は別に扱われることが多い。
執筆者:江尻 光一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報