日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオグチイシチビキ」の意味・わかりやすい解説
オオグチイシチビキ
おおぐちいしちびき / 大口石血引
rusty jobfish
[学] Aphareus rutilans
硬骨魚綱スズキ目フエダイ科に属する海水魚。千葉県館山(たてやま)以南の太平洋沿岸、小笠原(おがさわら)諸島、南西諸島、長崎県壱岐(いき)、五島(ごとう)列島、台湾など太平洋とインド洋に分布する。体は長い紡錘形で、口は大きく、上顎(じょうがく)の後端は目の中央下あるいはそれよりわずかに後方に達する。下顎の先端は上顎前端より突き出る。両顎の歯はきわめて小さく、大形の個体では微小である。鰓孔(さいこう)は眼窩(がんか)のはるか前まで伸びる。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)に歯がない。背びれと臀(しり)びれの最後の軟条は著しく突出する。尾びれは細長く深く二叉(にさ)する。体色は青灰色または藤(ふじ)色から全体に赤みを帯びるものまでさまざまである。主上顎骨の縁辺は黒い。口内、鰓孔内およびえらは銀色に輝く。腹びれと臀びれは白いが、その他のひれは黄色から赤色。最大全長は約80センチメートルであるが、普通は50センチメートル。水深100~250メートルの岩礁やサンゴ礁域にすむ。バヌアツ諸島海域では産卵の盛期は11~12月。一本釣り、深海延縄(はえなわ)、定置網などで漁獲される。肉は白身で焼き魚、刺身などにするとおいしい。イシフエダイに似るが、本種の鰓弓(さいきゅう)の鰓耙(さいは)は上枝が16~19本、下枝が32~35本であること(イシフエダイでは上枝が6~12本、下枝が15~18本)で容易に区別できる。
[尼岡邦夫 2018年1月19日]