日本大百科全書(ニッポニカ) 「オキソニウム化合物」の意味・わかりやすい解説
オキソニウム化合物
おきそにうむかごうぶつ
oxonium compound
酸素原子が3本の共有結合で他の原子と結合をつくり1価の陽イオンとなっている構造の化合物であり、一般に2価の酸素の化合物に水素イオンH+または他の1価陽イオンが結合することにより生成する。
オキソニウム化合物という名称は、1875年にフランスのフリーデルがジメチルエーテルの塩酸塩[(CH3)2OH]+Cl-をつくり、これをオキソニウムとよんだことに始まる。一般式R3O+X-(R=Hまたは炭化水素基、X-=陰イオン)により示される化合物であり、1価の陽イオンであるオキソニウムイオンR3O+が陰イオンX-と対をなして塩を形成しているので、オキソニウム塩ともよばれる。
もっとも簡単なオキソニウムイオンであるヒドロキソニウムイオンH3O+は、ヒドロニウムイオンともよばれ、酸が水溶液中で解離する際に生成する。酸の解離により生成する水素イオンH+は水1分子と結合してオキソニウムH3O+になり、さらに溶媒の水が数分子周りについた構造をとっている。水中での酸の解離は、塩酸を例にとると、次式のようにヒドロキソニウムイオンを生成する反応である。
アルコール、エーテルも水と同様に、強酸を加えるとオキソニウム化合物を生成する。このほかに、アルデヒド、ケトン、エステルなども強酸によりオキソニウム化合物を生成することが知られている。
[廣田 穰]