オナガネズミ(読み)おながねずみ(英語表記)long-tailed birch mouse

改訂新版 世界大百科事典 「オナガネズミ」の意味・わかりやすい解説

オナガネズミ
Chinese birch mouse
Saghalien long-tailed mouse
Sicista concolor

マウスより小さく,尾が著しく長い齧歯(げつし)目トビハツカネズミ科(オナガネズミ科)の哺乳類。カンスーオナガネズミともいう。サハリン,ウスリー,中国の甘粛(かんしゆく),四川,天山,カシミール,カフカスに分布。体長6.3cm,尾長11.5cm前後。体の背面は一様な淡褐色,腹面はわずかに褐色を帯びた淡灰色。尾が体長の1.8倍と異常に長いのでこの名がある。この属にはほかに4種があり,ヨーロッパ北東部とアジア中・北部に分布するが,尾は本種ほど長くなく,体長の1.5倍以下である。本種はサハリンでは,丈の高いイネ科植物の茂った原野にすむがまれ。ヨーロッパとシベリアにすむ近似種セスジオナガネズミS.betulina背筋に黒線がある。地上をホップして走り,後足の第5指と他の指で小枝を握り,半ば巻きつく尾を利用して巧みに低木に登る。巣は地下に草でつくり,初夏に1腹4~5子を生む。食物は漿果(しようか),種子昆虫など。秋,地中の穴に入り翌春まで6~8ヵ月間も冬眠する。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オナガネズミ」の意味・わかりやすい解説

オナガネズミ
おながねずみ
long-tailed birch mouse
[学] Sicista caudata

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目オナガネズミ科の動物。樺太(からふと)(サハリン)、沿海州ウスリー地方および中国東北地域のステップに生息し、植物や昆虫を食べる。頭胴長6~7センチメートル、尾長11~12センチメートル、足は1.7~1.8センチメートル。ハツカネズミに似るが、尾が非常に長く、草木に登るときは尾を巻き付けて登る。体色は黄褐色近縁種には背に黒条のあるものもいる。繁殖期は年1回5~6月で、妊娠期間は4~5週間。子は30日で巣立つ。寿命は長く約40か月。近縁種キタオナガネズミS. betulinaは地下の巣穴で、哺乳類では最長の8か月間も冬眠し、初め12グラムあった体重も、冬眠あけには6グラムに半減する。ミナミオナガネズミS. subtilisはビート栽培地で害虫を駆除するので有益である。

[土屋公幸]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android