お九日(読み)おくんち

改訂新版 世界大百科事典 「お九日」の意味・わかりやすい解説

お九日 (おくんち)

9月9日,重陽(ちようよう)の日を,秋祭の日とする風から,尊んでお九日といったもの。供日,宮日などとも書く。関東地方では,3度の9日を〈みくんち〉といい,それぞれ初九日,中の九日,しまい九日と称していずれも重要な節目とした。関東以北では稲の収穫の関係から,農事のすんだ末の29日を重んずるところもある。これをとくに〈刈上げ節供〉ともいった。九州では,一般に祭礼の日をいい,必ずしも9月9日でない場合も数多くある。長崎市に鎮座する諏訪神社の〈おくんち(長崎くんち)〉はとくに有名であるが,これは新暦10月7日から9日にかけて行われる。まず7日は各町の傘鉾(かさほこ)を先頭にめいめい趣向をこらした踊りがあり,続いて3基の神輿(みこし)が本殿を出て200段の階段を一気に駆け上る行事がある。8日は有名な竜踊(じやおどり)があり,9日にはまた3基の神輿が市中を練った後,諏訪長坂を一気に駆け上って祭りを終わる。
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百科事典マイペディア 「お九日」の意味・わかりやすい解説

お九日【おくんち】

9月9日の重陽(ちょうよう)の日を〈お九日(おくにち)/(おくんち)〉と呼んで秋祭をする風習各地にあるが,九州地方では単に祭の意味にも使う。19日,29日をいうところもある。長崎市諏訪神社(10月7〜9日),唐津市唐津神社(1968年以後11月2〜4日)のおくんちが名高い。
→関連項目蛇踊諏訪神社長崎[市]

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世界大百科事典(旧版)内のお九日の言及

【蛇踊】より

…民俗芸能。風流(ふりゆう)芸(風流)の一種で長崎市諏訪神社の俗におくんち(お九日)と呼ばれる秋祭(10月)に行われる。異国情緒の代表的な練り風流で,1975年から竜(じや)踊と書く。…

【数】より

…8だけでなく,3や5も三世界(高天原,黄泉(よみ)国,現(うつし)国)や三種の神器,イザナミ・イザナキの三貴子,宗像(むなかた)の三女神,五魂(海,川,山,木,草),五十猛(いそたける)神,五部(いつとも)神などの例があり,吉数とみられていた。しかし,《日本書紀》あたりからしだいに大陸文化を尊ぶ風が盛んになって,七夕(7月7日)や重陽(9月9日)の節供のように8に代わって7や9が聖数として重視されるようになり,今日では七五三,三三九度,お九日をはじめとして民俗のうえでは欠くことのできない重要な数となっている。 数は民俗の中では,俗信における語呂合せなどに基づく不定のものと,年中行事や人生儀礼での期日,供物の数,行為の回数,年齢など一定しているものとがある。…

※「お九日」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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