カイウミヒドラ(その他表記)Hydractinia epichoncha

改訂新版 世界大百科事典 「カイウミヒドラ」の意味・わかりやすい解説

カイウミヒドラ
Hydractinia epichoncha

ヒドロ虫綱ウミヒドラ科の腔腸動物。巻貝シワホラダマシPollia mollisの殻の上にヒドロ根を膜状に広げ,その上に淡紅色の各種ポリプを群生する。本州中部以南の沿岸で春から夏にかけてふつうに見られる。ヒドロ根の内部にはキチン質骨格があり,これより多くのとげが突出している。ポリプには栄養ポリプ,指状ポリプ,らせんポリプ,生殖ポリプなどがあり,それぞれ機能が分業している。栄養ポリプはもっとも大型で,口の周囲に20~30本の触手が並び,指状ポリプは細長くて触手が多く,またらせんポリプは長く,らせん状にのびている。生殖ポリプは小型で,少数の触手があり,数個の生殖体を環状につけている。クラゲを遊離せず,一生ポリプ型だけである。近縁種にはヒメエゾボラに着生するキタカイウミヒドラH.uchidaiがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カイウミヒドラ」の意味・わかりやすい解説

カイウミヒドラ
Hydractinia epiconcha

刺胞動物門ヒドロ虫綱アンソアテカータ目ウミヒドラ科。殻長 2cmほどの巻貝(→巻貝類),シワホラダマシの殻の上にヒドロ根を膜状に広げ,その上に個虫が群生しているため貝殻は見えない。ヒドロ根の内部にはキチン質の骨格があり,多くのとげが表面に突き出る。個虫の長さは 5mmほど。個虫は栄養ポリプ,指状ポリプ,生殖ポリプなど多形で,それぞれが栄養や生殖などの役割を担っている。栄養ポリプは最も大型で,口の周囲には 20~30本の触手があり,生殖ポリプは数個の生殖体を環状につけている。生活史のなかでクラゲ型の時期はない。本州中部から九州まで,潮間帯から浅海岩礁に普通に見られる。(→刺胞動物ヒドロ虫類無脊椎動物

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カイウミヒドラ」の意味・わかりやすい解説

カイウミヒドラ
かいうみひどら
[学] Hydractinia epiconcha

腔腸(こうちょう)動物門ヒドロ虫綱ヒドロイド目ウミヒドラ科に属する海産微小動物。小形巻き貝であるシワホラダマシの殻の上に群体をつくっている。ポリプには多形現象がみられ、栄養をつかさどる栄養個体のほか、触手に富んだ長い指状個体、生殖体を芽出する生殖個体、また螺旋(らせん)状に屈伸する螺旋個体などが区別され、これらはいずれも分岐せず、それぞれの基部は貝殻の表面を覆うヒドロ根から直接生じている。ヒドロ根からはまたキチン質の棘(とげ)が突出している。生殖体は普通、クラゲとなって遊離することはない。群体は淡紅色で美しい。本州中部以南の浅海の岩礁帯にすむ。

[山田真弓]

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世界大百科事典(旧版)内のカイウミヒドラの言及

【群体】より

…コケムシはふつうの個員を収容する虫室のほかに,受精卵を収容する卵室,群体につくごみを除去したり防御の役割をしたりする振鞭体,物をとらえるように筋肉の発達した鳥頭体などが集まった多形性群体である。またカイウミヒドラには,栄養個員のほかに指状個員,らせん個員,刺状個員,子茎などがある。一般にカツオノエボシなどのように複雑な群体では,各個員は独立して生活することが困難になっている。…

※「カイウミヒドラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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