日本大百科全書(ニッポニカ) 「カイソウ」の意味・わかりやすい解説
カイソウ
かいそう / 海葱
sea onion
[学] Drimia maritima (L.) Stearn
Urginea maritima (L.) Baker
ユリ科(APG分類:キジカクシ科)の多年草。地下の大きな球卵形の鱗茎(りんけい)から秋に高さ50~100センチメートルの花茎を伸ばして、上部の約40センチメートルにわたり白色で緑紫色の線の入った6個の離生花被(かひ)からなる多数の花を総状花序につける。花期後に灰緑色、無毛、広披針(こうひしん)形の葉を約10枚出す。地中海地域の海岸に野生し、アルジェリア東部にもっとも多く、イタリア、シチリア島、マルタ島でも栽培している。鱗茎は直径15~30センチメートル、2.5キログラムに達し、外部は赤褐色の膜で覆われ、内部は苦く、粘液性で、皮膚につくと水泡を生ずる。この鱗茎をカイソウまたはスキラscillaと称して薬に用いる。古代エジプトではチフスの治療薬として高く評価されていたが、ディオスコリデスの薬物書に正しい薬効と使用法が記述されている。少量用いると強心興奮(配糖体スキラレンによる)、去痰(きょたん)、利尿剤として作用し、多量用いると嘔吐(おうと)、下痢をおこす。
[長沢元夫 2019年3月20日]