アメリカの有機化学者。アイオワ州バーリントンに生まれ,1924年イリノイ大学で学位を得,同大学およびハーバード大学の講師を経たのち,28年デュポン社化学部に新設された基礎研究プログラムの有機化学部長に招かれた。以後9年間に当時未開拓であった分野の高分子化学を探究,縮重合を主軸とした巨大分子設計の系統的研究で52の学術論文を発表した。この研究が新物質開発の直接の糸口となり(特許数69件),30年にクロロプレンの重合で合成ゴム〈ネオプレン〉(商品名)を得ることに成功(1932工業化),35年ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合により初の合成繊維〈ナイロン〉(属名)を合成した(1939工業化)。36年企業に籍を置く有機化学者としては初めてアメリカ科学アカデミー会員に選出された。37年,フィラデルフィアでうつ病がこうじて自殺,41歳の短い生涯を閉じた。
執筆者:古川 安
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…1920年代に幕があいた石油化学工業は,30年代に入って,ナイロンと低密度ポリエチレンという,合成繊維とプラスチックを代表する製品が開発されたことにより,本格的な発展への足掛りをつかんだ。ナイロンは,38年デュポン・ド・ヌムール社(以下デュポン社)のW.H.カロザーズが発明したものだが,その開発は,爆薬の生産により第1次大戦中に急成長を遂げたデュポン社が,新たな発展の場を求めて豊富な資金を有機合成化学の基礎研究に注いだことによって成功したといえる。 他方,低密度ポリエチレンはイギリスのICI社によって1931年偶然に発明されたが,その工業化は39年になってスタートした。…
…ナイロンは人類が最初に工業生産した合成繊維である。1930年代初頭,高分子説が認められたが,それを合成面から確立したのがアメリカのW.H.カロザーズである。カロザーズは重合反応の基礎的研究を広範囲に行い,低分子から重合によって高分子ナイロンを作り出した。…
※「カロザーズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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