カンエンガヤツリ(その他表記)Cyperus exaltatus Retzius ssp.iwasakii(Makino) T.Koyama

改訂新版 世界大百科事典 「カンエンガヤツリ」の意味・わかりやすい解説

カンエンガヤツリ
Cyperus exaltatus Retzius ssp.iwasakii(Makino) T.Koyama

朝鮮,中国,マレーシア,オーストラリアに分布するカヤツリグサ科の草本で,日本では第2次世界大戦後北海道,東北地方でむしろを編む作物材料として栽培された。カンゾウ莞草)ともいう。朝鮮のワングルも本種のことである。熱帯地方では宿根多年草で,温帯では一年草湿地に生え,地下に短い地下茎があり,稈(かん)は三稜形で高さ60~90cm。葉の基部は葉鞘(ようしよう)となって茎を抱き,葉身は幅0.8~1.5cm,上面に2稜がある。9~10月,長さ10~30cmの大型の花序を複生する。花序を包む総苞片は4~5枚で長く,葉状を呈する。穂枝は長いものでは20cmに達する。花穂は長さ2~4cm,幅1~1.3cmの柱状。小穂は長さ5~7mmで,10~20の小花を2列につける。果実は卵楕円形で長さ0.8~1mm。種子苗代にまいて苗を育て,水田に植えつけ,秋穂が出たころに刈り取り,茎を2~6裂して乾かす。細工物用には剝皮したものを乾かして使う。インド,アフリカには母種のssp.exaltatusが分布する。和名カンエンガヤツリは本草学者岩崎灌園の名にちなむ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カンエンガヤツリ」の意味・わかりやすい解説

カンエンガヤツリ
かんえんがやつり / 灌園蚊帳吊
[学] Cyperus exaltatus Retz. var. iwasakii (Makino) T.Koyama

カヤツリグサ科(APG分類:カヤツリグサ科)の大形の草。高さは1メートル前後になり、茎は三稜(さんりょう)形である。大形の花序が茎の先につき、黄褐色の小穂が密につく。日本では湿地にまれに生え、渡り鳥によってもたらされた帰化植物と考えられる。熱帯に広く分布する多年草であるが、日本のものは一、二年草の性質を帯びる。和名は、江戸時代の本草学者岩崎灌園(かんえん)にちなんでつけられた。朝鮮ではこれをワングル(莞草)とよび、敷き物をつくるのに用いる。

[木下栄一郎 2019年7月19日]


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百科事典マイペディア 「カンエンガヤツリ」の意味・わかりやすい解説

カンエンガヤツリ

カヤツリグサ

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世界大百科事典(旧版)内のカンエンガヤツリの言及

【カヤツリグサ】より

… カヤツリグサ属Cyperusは,スゲ属に次ぐカヤツリグサ科の二大属の一つで,全世界の熱帯,亜熱帯を中心として400種余りある。上記の3種のほかに,水田の雑草にはタマガヤツリ,ウシクグ,コアゼガヤツリ等があり,大型で沼に生えるツクシオオガヤツリ,カンエンガヤツリ,ヌマガヤツリ等は南方や中国大陸から渡り鳥が運んで来たものと思われる。有用植物としては,エジプトのパピルスのほかに,シチトウイのように長くまっすぐな茎をもつものが編料として利用される。…

※「カンエンガヤツリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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