出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
本来の生育地から、人間の媒介によって他の地域に移され、そこで野生化して繁殖する植物をいう。島国である日本には、さまざまな原因で長い年月の間に、外国から渡来し、野生化した帰化植物がある。欧米などでも他の大陸からの帰化の例が同様に知られている。
帰化植物には、栽培などの目的で意識的に移入した植物が逸出する場合と、種子や果実(種実)が他物に付着したり混入したりして、無意識的に移入される場合とがあるが、いずれにしても、帰化植物が日本在来の植物集団のなかに仲間入りするには、それ相応の強い生活力をもたねばならない。移入の機会に恵まれた種子は、発芽成長して生活環を全うし(一次帰化。生活環を全うしない場合は仮帰化)、さらに分布域を拡大する(二次帰化)。無意識的な種子移入による一次帰化地は、港、貨物駅構内、養鶏場、精米所、牧場など、さまざまである。旺盛(おうせい)な土着能力をもつ帰化植物は、路傍、庭、休耕している田畑、造成地など、人為的な影響を受けた場所を二次帰化地として、さらに分布圏を広げていく。
近年、日本各地に繁茂しているセイタカアワダチソウは帰化植物のよい例である(原産地は北アメリカのアラバマ州であり、州花とされている)。現地ではよく繁殖し、多くの種に分類され、変異性に富み、花粉は風媒され、多数の種子は風で散布される。また、地下茎は強い栄養繁殖の能力をもち、他の植物に有害となる他感作用物質を出す。このような性質が、新しい土地での生活に有利なのであろう。一般的に帰化植物は、細胞学的には在来種に比べて高次の倍数体植物が多いという。
新しい土地に野生化した帰化植物も、群落遷移の初期(二次遷移)の段階までのことで、やがてススキなどの多年生草本期や陽樹期になると消滅する。
[小滝一夫]
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…もともとその地になく,他から移住したり導入されたりして居つくようになった動植物。外国から入ってきた生物を指すことが多く,帰化動物,帰化植物などといわれる。最近ではアメリカシロヒトリ,セイタカアワダチソウなどが有名である。…
…人工的な環境を生育場所としていても,その生物が自然な分布能力で分布域を広げたものは,帰化生物とはいわない。
【帰化植物】
[農耕開始以前に人間に持ち歩かれた植物]
農耕の開始以前にも,人間は植物と密接な関係をもって生活をしていた。狩猟採集民族が有用な植物を意図的に保護している例は多く知られているが,民族の放浪とともにこの有用な植物を持ち歩き,それが野生化した例はあったと思われる。…
…日本に自生する山野草のうち人里に入って雑草となっているものにはススキ,クズ,ヨシ,イタドリ,ネザサ,ヨモギなどがあり,また耕地雑草では水田のアギナシ,畑地のネザサの2種が知られている。今日,日本の雑草の大部分を占めているのは,本来の自生地である外国から人間,文化の交流に伴って渡来し定着した帰化植物である。古くは,有史以前にイネに随伴して渡来した南方起源のものがある。…
※「帰化植物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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