カーマ(読み)かーま(英語表記)Seretse Khama

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カーマ」の意味・わかりやすい解説

カーマ(Seretse Khama)
かーま
Seretse Khama
(1921―1980)

ボツワナの政治家。バマングワト人最高首長の子として生まれる。南アフリカ連邦の大学を卒業後オックスフォード大学に留学した。留学中イギリス女性と結婚したため母国とイギリスの反対にあい、首長継承権を失った。1956年帰国し、1962年民主党を結成、同時に立法評議会議員となり、1965年選挙で大勝し首相就任。1966年9月の独立後大統領。反人種主義の立場にたち、近隣諸国とともに南部アフリカの解放闘争を支援するいわゆるフロントライン五か国を結成、これら諸国を中心とする南部アフリカ協力評議会(SADCC)を提唱し、南アフリカ共和国の経済支配からの離脱を図った。1980年7月病死。

[林 晃史]


カーマ(古代インドの愛の神)
かーま
Kāma

古代インドの愛の神。元来サンスクリット語の「意欲」という意味の普通名詞であったものが、しだいに「愛欲」とか「性愛」という意味に狭められ、固有名詞として愛の神となった。サンスクリット文学ではオウムにまたがる美男子とされ、左手にはミツバチの群がるサトウキビの弓を持ち、右手にはそれぞれ「悩ます」「焦がす」「迷わす」「攪乱(かくらん)する」「酔わす」と名づけられた5本の矢を持ち、これで若い男女の心を射って恋情(れんじょう)をかき立てる。イルカをそのしるしとし、また花の弓矢を携える者ともいわれる。あるとき彼は妻のラティ(悦楽)と友人のバサンタ(春)を伴い、ヒマラヤ山中で苦行に励んでいたシバ神を誘惑しようとしたが失敗し、神の怒りに触れてその第三の目から発した火により焼き殺される。しかしシバ神はラティの願いを受け入れて、彼をアナンガ(形なきもの)として人々の心のなかに再生させたという。

[原 實]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カーマ」の意味・わかりやすい解説

カーマ
Khama, Seretse

[生]1921.7.1. セロウェ
[没]1980.7.13. ハボローネ
ボツワナの政治家。イギリス保護領ベチュアナランド最大の部族ングワト族の首長の子として生れ,5歳で首長。南アフリカのフォートヘア大学,ウイットウォータースランド大学を経てイギリスへ渡り,オックスフォードのベイリオル・カレッジで法律,政治,経済を学んだ。この間イギリス女性と結婚したため部族の非難を浴び,1956年首長の地位を放棄する条件で帰国を認められた。 61年ベチュアナランド民主党 BDPを創設して党首となり,同年の第1回立法評議会選挙で当選。 65年立法議会選挙に勝ち自治政府首相。 66年9月独立とともにボツワナ共和国初代大統領。穏健,親西欧的態度を保持したが,74年からは,南部アフリカ前線諸国首脳の一員としてジンバブエの独立支援など精力的に活動。 79年 10月大統領に4選された。 80年病死。

カーマ
Kāma

インド神話における愛の神。カンダルパともいう。おうむに乗り,5本の花の矢を持ち,花の弓につがえて人の心を射る。ラティ (快楽) は彼の妻であり,バサンタ (春) は彼の親友である。彼はシバ神の苦行を妨げようとしてシバの第3の目によって焼き殺されてしまう。それ以来,アナンガ (体なきもの) と呼ばれるようになったという。また,マノーブー (心に生じるもの) とも呼ばれる。仏教に取入れられ,愛染明王として,広く民衆の信仰を受けた。

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