化学辞典 第2版 「ガスセンサー」の解説
ガスセンサー
ガスセンサー
gas sensor
特定の気体成分のもたらす物理・化学的効果を電気信号にかえて測定する装置.工事の現場などで見られるLPG用半導体センサーの例のように,小型で手軽な装置が代表例で,広い分野で実用されている.多くの種類があり,適用できる気体も多種類である.センサー出力の電気信号への変換は,能動型(センサー自体が発電するもの.たとえば,固体電解質センサー,電気化学センサーなど)と,受動型(外部からの電気信号の変化を見るものなど)がある.【Ⅰ】半導体センサー:半導体と検体ガスの相互作用で電気伝導率が変化することを利用したもので,次の2種類に大別しうる.(1)表面制御型;酸化物型半導体の表面にガスが吸着すると,電子の授受が起こって電気抵抗が変化することを利用したもの.可燃ガス(H2,CH4,COなど)に多く用いられるが,NO2,O3,フロンなどにも利用できる.センサー材にはSnO2,ZnOなどが多用されるが,そのほかの金属酸化物や有機半導体も利用できる.(2)バルク制御型;半導体のバルク部分に気体を入れて,その組成の変化に伴う電気抵抗の変化を調べる.格子欠陥半導体を用いる.【Ⅱ】表面電位式センサー:ガス吸着による,表面電位や界面電位の変化を利用するもの.(1)ダイオード型;金属/半導体の接合ダイオードの整流作用がガス吸着によって変化する現象を利用する.たとえば,H2 用のPd/CdS,Pt/TiO2やSiH4用のAu/TiO2など.(2)FET型;MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)で,ゲート部の金属を薄くして,ゲート金属への気体吸着によるしきい値の変化を利用する.たとえば,H2,NH3,H2S用のPd/SiO2/Siなど.【Ⅲ】固体電解質センサー:固体電解質のセルの両側に両電極を付けた電気化学電池で,検体の気体とセルの電解質との反応による電気的変化を測定する.応答の検知方式によって,電位検出式と電解電流検出式に大別される.電解質の種類により,H2,Cl2,NO2,CO2などの測定用のものもつくられている.【Ⅳ】接触燃焼式センサー:PtやPdの微粒子を触媒として担持させたアルミナなどを,センサー素子に被覆して,検体ガスを燃焼させ,その燃焼熱で測定する.熱量変化は,素子に埋め込んだPt線の電気抵抗の変化で調べる.可燃性気体に対して感度が大きい.給湯器の排気中のCO検知用などに利用される.【Ⅴ】電気化学式センサー:電解質水溶液のセルに両極と検知ガスが入る透過膜を付けたもので(たとえば,Pt|H2SO4またはNaOH|Ptなど),セル内で検体ガスを電気化学的に酸化または還元してその電流変化で測定する.CO測定に多く利用されるが,そのほかの気体,SO2,O2,SO2,フロン,ホスフィンなどにも利用されている.【Ⅵ】圧電体センサー:水晶(またはZnOなど)の振動子の共振は,表面にガスを吸着させると敏感に変化することを利用したもの.水晶またはZnOなどの振動子の表面に吸着媒を塗布したもので,微量の水分,そのほか環境ガス,毒性ガスなど極微量成分の検出に有用であるが,ほかの気体による妨害も受けやすい.SO2,NH3,SO2などへの利用例も知られている.【Ⅶ】光学式センサー:光ファイバーに検体の気体を吸着させる感応層を付けたもの.光の吸収または蛍光の発光や消光を測定する.H2,O2,CO,NH3,NO2などの測定例がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報